厨房のウラ側チェック(53)魚介類の鮮度を鑑るその3

1994.07.04 55号 22面

前号で述べてきた細菌学的検査における数値的な目安としては、食品衛生法の成分規格や各県などの指導基準に従って下さい。いずれにしろ、一般生菌数で  〓10g以下の物が好ましいです。もちろん、食中毒細菌は陰性でなくてはなりません。では最後に、3理化学的検査について述べてまいりましょう。この検査には、揮発性塩基窒素、揮発性酸類、エタノール、K値、pHなどがあります。

揮発性塩基窒素は魚介類の腐敗臭の成分であるトリメチルアミン、ジメチルアミン、アンモニアなどを測定するものです。この判定基準は五から一〇mg/一〇〇gで新鮮、一五から二五mg/一〇〇gで普通、三〇から四〇mg/一〇〇gで初期腐敗、五〇mg/一〇〇g以上は腐敗とされています。しかし、魚種によって生成物の違いから応用できない場合もありますから必ず予備実験をして下さい。

東京都衛生局乳肉水産食品指導基準によれば、揮発性塩基窒素(VBN)基準は急速冷凍食品の生食用魚介類で二〇mg/一〇〇g以下、魚類さしみ(タコとイカは含まない)及びすし種魚介類で二五mg/一〇〇g以下、鮮魚介類で五〇mg/一〇〇g以下となっています。

次に、揮発性酸類ですが、これには遊離アミノ酸の脱アミノ反応によって生成する酢酸、酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を測定することによって鮮度判定いたします。しかし感度や操作に難があり使用されていない。

エタノールについては、徳永等の実験データからマイワシやアジの場合は五ppmのエタノールが検出されると初期腐敗の状態にあるといわれています。また、ハタハタは一〇~一三ppmのレベルになると初期腐敗といわれてます。K値の前にpHを説明しますと、pHは通常七・二から七・四の範囲に生時あります。死にますと解糖反応のみが作動して乳酸が体内に蓄積されることによって、pHが酸性側に傾きます。その次に塩基物質の生成によりpHが上がるわけです。しかし、この方法も単独で判断することは、かなりの困難が生じます。

最後にK値について説明いたします。K値とはATPの分解生成物を分別定量して求めるものです。ATPはアデノシン3リン酸のことで、魚肉中に大体一mg/kg程度あり、魚介類の死後ATPの再生系がストップすると、存在している魚肉中のATPが一定の方式で分解されます。このつづきは次号で。

食品衛生コンサルタント 藤洋

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