東京イースト21、21世紀への新都市空間を提案

1994.06.06 53号 4面

営団地下鉄東西線の東陽町駅から四ツ目通りに出て、葛西橋通り方向へ六、七分歩く。通りを歩いて行くとすでに高層ビルが見える。小さな横十間川を渡れば、施設はレジャーランドか、テーマパークのような雰囲気で、地域にその存在をアピールしている。TOKYO EAST21(東京イースト21)はインテリジェントオフィス、ホテル、ショッピングセンター、レストラン、イベント広場などから成る複合都市施設で、二一世紀に向かっての新しい都市空間を提案している。

九二年9月、鹿島建設が自社用地の資材置き場だった約一万坪を再開発して具体化したもので、総工費約九〇〇億円を投じている。

施設概要は別項のとおりで、地上二一階、地下三階建てのイースト21タワーを中核に、地上二〇階、地下一階建てのホテルイースト21東京、地上五階建てショッピング施設「生活創庫UNYイースト21」、地上二階建てイースト21モール(物販、サービス、飲食店など約三〇店舗)、イースト21プラザ(四五〇坪)などを展開している。

〇イースト21タワー

地上高約一〇〇m、延床面積一万二四〇〇坪のオフィス棟で、鹿島建設と関係会社をはじめ、ジョンソン&ジョンソン、ユニーグループなどが入居している。オフィス人口二〇〇〇人以上。

〇イースト21モール

レストランをはじめ、薬局、クリニック、歯科医院、旅行代理店、銀行、信用組合、コピーショップ、DPEショップ、チケット・ぴあ、ミスター・ミニット(靴修理、合鍵)、ヘア&エステティックサロン、宝くじショップなど約三〇店を展開し、飲食、商業ゾーンを形成している。

〇生活創庫UNYイースト21

地上五階建て、スーパーユニーが経営するショッピングセンターで、売場面積約四五〇〇坪と、江東区内では最大級のスケールを誇る。

〇イースト21プラザ

オフィスタワー、モール、ホテル、ショッピングセンターに囲まれた形で展開するイベント空間で、音楽やアトラクションなど様々な催物がおこなわれる。

〇ホテルイースト21東京

鹿島建設が経営するホテルで、一九世紀初めのヨーロッパ様式を採り入れた重厚さとクラシックやインテリアに特色がある。

客室総数四〇四室に加え、大小宴会場八室、レストラン五店、バーラウンジ三店、スナック一店、イベントホール、ヘルスクラブ、プール(インドア、アウトドア)などの施設を有している。

東京イースト21は近接地の月島、豊洲、辰巳、新木場の都市機能をイメージした街づくりというのが、再開発事業のコンセプトだ。

「イースト21はハイテクノロジーと人間の豊かな感受性との調和、都市生活者の多様なニーズに対応するという考えで、利便性と快適性を基本に、商業や文化施設を充実させているのです。

この考えに沿って、去年から今年にかけまして、新たにチケット・ぴあやDPE、宝くじ売り場などを増設したのも、街としてのサービス機能を充実させ、地域の人たちの利便性に寄与しようとしているからです」と話すのは、施設運営管理会社の鹿島東京開発(株)開発部安達公司部長。

人が集まらない施設づくりであれば、いくら再開発事業といっても意味を成さなくなるわけだが、東京イースト21の場合は、レストラン街や大型のショッピングセンター、イベント広場などを展開しているので、それなりに集客力を発揮しているわけだ。

昨年11月に調査したデータでは、平日一万二〇〇〇人、日曜日三万人の来街者という結果で、年間売上げはSCが一六〇億円、飲食一二億円の水準をクリアしている。

しかし、テナント(飲食店舗)の中には、モールの中での出店なので、店が外から見えにくいこと、フロアレイアウトがスッキリしないこと、とくに土・日はオフィスが休みになるので、平日と土・日のギャップが大きい‐‐といった声も強く、現実の集客力は十分でないようだ。

「地域の外食ニーズが弱いせいもあるかも知れませんが、全体としての施設機能は立派でも、何かよそよそしくエキサイティングじゃないんです。施設内にラーメンとか赤チョウチンとか大衆性のある店、もちろん賃貸条件のこともありますが、いろんなタイプの店があった方が“街”としての賑わいが出てくると思うんですが、現実にはおもしろ味のない施設展開になっていて、地域の人たちを引っぱり込むようにはなっていないんです」(ある店の店長)。

施設側としては各種イベントで集客効果を上げる努力をしているのだが、店舗に客が流れ込むというシナリオにはなっていないということだ。

・名称/東京イースト21

・事業主体/鹿島建設(株)

・竣工/九二年7月

・所在地/東京都江東区東陽六‐三‐三‐三

・土地利用/準工業地域および商業地域

・敷地面積/一万坪

・建築面積/七四〇〇坪

・施設内容/イースト21タワー・地上二一階、地下三階建て▽駐車場棟・地上六階、地下二階建て、七〇〇台収容▽ホテルイースト21東京・地上二〇階、地下二階建て▽生活創庫ユニーイースト21・地上五階建て▽イベント広場イースト21プラザ(四五〇坪)▽イースト21モール

◇一階(一四店)

シーフードレストラン「リトルカーニバル」▽ファストフード「ミスタードーナツ」▽クレープ「クレープハウスユニー」▽ハンバーガー「ロッテリア」▽喫茶「カフェ・デュ・モンド」▽レストラン&バー「ラルジェント」▽レストラン「コックドール」▽オムレツ料理「たまご屋さん」▽割烹「冨士浜一」▽寿司「鮓石ばし」▽しゃぶしゃぶ「どんぼーい」▽うどん・そば・酒処「鞍手茶屋」▽とんかつ「和幸」▽居酒屋・牛たん「枡本」

◇二階(二店)

コーヒーショップ「ティファニー」▽スパゲティ「ロマーナ」

ダスキン(レストラン事業本部)の経営で、姉妹店が大阪、名古屋、千葉にある。本来はシーフード、バーベキュー、ラウンジ(軽食)の三つの業態を一つにした複合レストランの運営形態だが、この店の場合はシーフード主体のメニュー構成で、カジュアルさを売りものにしている。

店舗面積一五〇坪、客席数一八〇席、一階建てフリースタンディングの大型店舗で、イースト21モールでは最大の規模を誇る。

外観はアミューズ的感覚で、エキサイティングな雰囲気だが、「アーリアメリカン」をコンセプトとしているだけに、客席フロアはシックで大型のパブレストランという造りだ。

料理は冷凍食材を活用してずわいがに(一二〇〇円)、オマールロブスター(一二八〇円)、オマールロブスターのオーブン焼き(一三八〇円)などのシーフードをはじめ、カニフライセット(一二八〇円)、ステーキセット(一四八〇円)、海鮮セット(一六八〇円)、オマールセット(一九八〇円)、このほかライトミール(五八〇~六八〇円)などで、食材面からみると二〇品目、料理のバリエーションで考えると四〇品目前後と大きく絞り込まれている。

「この3月に思い切ってメニュー数をおさえて、よりチョイスしやすいようにしたことと、価格も一〇〇〇~二〇〇〇円以下と低価格志向を打ち出したのです。客数を多くとりたいという考えです」(岸田隆幸総支配人)。

客単価昼九三〇~九八〇円、夜二三〇〇~二五〇〇円。日商五〇~六〇万円。

富士ブライダル(本社=東京・中央区東日本橋)が経営する割烹料理店だ。店舗面積三五坪、客席数三五席。

店の看板料理は割烹・会席料理だが、単価が高いので現在の消費不況下においては会社利用が落ち込んでいることもあって、営業面では苦戦を強いられている。

会席料理は「雪懐石」八〇〇〇円、「花懐石」一万円、「月懐石」一万二〇〇〇円ほか、「天婦羅会席」七〇〇〇円、「しゃぶしゃぶ会席」八〇〇〇円などで、低価格志向が大きな流れとなってきている飲食業界においては料理の質、内容が違うとはいえ、これだけの単価を払える客層は限られてくる。

このため、集客力を高めていく考えとして、昨年11月から五〇〇~六〇〇円前後の低価格の単品メニューを増やしたり、天ぷらの“食べ放題”(一九八〇円)を導入したりと、新たなメニュー戦略を展開している。

この結果、減少傾向にあった客数も上向きになり、先行きの見通しも明るくなってきた。

「料理のプロとしては常に最高のもの、おいしいものを提供したいと考えるわけですけど、価格が高くなって客足が遠のいては店をやっている意味がなくなります。料理の質の追求、これはコストが高くなるわけですけど、料理人としてのこだわりと経営とのバランスをどう図っていくか、頭を悩ますところです」と語るのは店長兼料理長の鹿間悦伸さん。

味づくりは材料の使い方はもちろんのこと、香り、食感をも大切にする。そのためには手間ヒマがかかるわけだが、プロの本音としては安易な妥協はしたくない。しかし、一方においては収益を確保しなくてはならない根本課題がある。大きなジレンマというわけだ。

客層は平日はサラリーマンが主体で、土・日は地域の人たちの利用になるが、客数(一日五〇人くらい)は極めて少ない。このため、土・日にどう客数を伸ばしていくか、いろいろとチエを絞っているところだ。

客単価は単品料理で三〇〇〇~四〇〇〇円、会席料理で八〇〇〇~一万円。日商三〇万円内。売上げはまだまだアンダーで、坪売上げ一万円以上をクリアしたいところだ。

店舗面積二四坪、客席数六〇席。店はタテ長のフロアで、入口右手に厨房と向き合う形でカウンター(一〇席)、左手にテーブル席(三五席)、テーブル席の正面に個室スタイルの座敷(一五席)というレイアウトで、コンパクトな店がありながら客席にバリエーションがある。

しかも店は木造づくり感覚で、心を落ち着かせる。テーブルの中には多人数対応で、ケヤキの切り株を使ったものもあり、ワンポイントで野趣味をも訴求している。

この店の売りものは牛たん料理と地酒。牛たんは塩タン五五〇円、スープ三〇〇円、シチュー七〇〇円などが人気メニューで、昼は日替わり定食六八〇円ほか、牛たんスープ付き天むす七〇〇円、牛たん定食八〇〇円などを提供している。牛たんの単品単価は三〇〇~七〇〇円。

地酒は久保田、千寿、田酒、天狗舞、浦霞、美少年、出羽桜など六〇〇~七〇〇円を揃えているが、もちろん、ビールやウイスキー、焼酎なども置いている。

客層はオフィスタワーのビジネスマンなどが主体で、固定客が八割を占める。しかし、土・日には会社が休みになるので、平日と土・日のギャップが大きく、この点をどうクリアしていくかが、オープン以来の課題だ。

「土・日には地域からの買物やファミリー客を当て込んでいるんですが、施設の作り方、フロア構成などのせいなのか、店のアピール度が十分でなく、余り人が流れてこないんです。“安くて、早くて、おいしい”というコンセプトで店を運営しているんですが、施設全体の集客力のアップと飲食ゾーンに人が流れてくるようなフロア構成にしないと、客数は増えていかないような気がするんです」(井上良孝店長)。

昨年は売上げが目標を下回ったが、今年は販促やサービスの向上もあって、売上げが上向いてきた。客単価は昼八〇〇円、夜三〇〇〇円だが、坪売上げ一万五〇〇〇円、日商三五~三六万円をキープしている。

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