地域ルポ 「海浜幕張」(千葉) 目立つ広大な空き地、都市設計で不便も
幕張メッセやマリンスタジアムで地域イメージが広く浸透しているJR京葉線の海近幕張は「幕張新都心」として都市開発が進んでいる。
同新都心は千葉県の「千葉新産業三角構想」の基幹プロジェクトおよび国土庁の「業務核都市構想」の一環として開発事業が進められてきているもので、西暦二〇〇年には就業人口一五万人、居住人口八〇〇〇世帯、二万六〇〇〇人の都市機能の完成をみる。
新都心は計画面積五二二㌶の地域で進められているもので、前記のメッセを初め、テクノガーデン、ワールドビジネスガーデン、プリンスホテルなど多くの都市・文化および商業施設が完成している。
幕張新都心は、東京湾岸部に位置する広大な埋立地での開発事業で、平成2年3月に全面開通したJR京葉線および首都高速や湾岸道路で、東京都心部からは約三〇分という短い時間距離にある。
また、成田の新国際空港にも三〇分という好ロケーションにあり、このため単に新都心の建設にとどまらず、世界との交流を促進する国際拠点としての位置づけにもある。
新都心は、海浜幕張駅を軸にして、南北に施設の展開をみせており、駅舎の北側広場に立てば、幕張テクノガーデン、NTT、日本IBM、東京海上、ホテルスプリングス幕張といった高層ビルが眺望できる。だが、これらビルの周辺には広大な空き地が広がっている。
バブル経済の破綻で施設計画が中断しているということのようだが、ビルは建っているが、まだまだ無機質で整備途上の街という感じだ。
南側も同様の風景だが、このエリアは例の幕張メッセを初め、千葉マリンスタジアム、日本コンベンションセンター、ワールドビジネスガーデン、さらには今年7月2日にオープンした地域初の大型商業施設「プレナ幕張」が展開しているので、人の往来が顕著で、街としての賑わいをみることができる。
しかし、道路と歩道が必要以上に分離された都市設計になっているので、ビル内の商業施設などにアプローチする場合は空中デッキか、限定された横断歩道の利用に限られるので、不自由を強いられる。
新都心といっても、あくまでも大資本中心による施設の大型化と自動車優先の都市機能で、人間のメンタリティーやパッションを尊重した都市設計にはなっていないのだ。
このため、全体像としてみれば、近未来のメタリックな都市の姿だが、その中での生活の営みを考えた場合、人間の意識行動を軸としたソフト(精神)のつながりは希薄だ。
街は人が集散し、回遊してこそ賑わいを呈し、潤いを創り出す。地域をゾーニングしてハード(施設)をビルドすれば、それがすべてということではない。人間がハードに親しみ、馴染まなくては本来の目的を失うことになる。
幕張新都心は特に計画性が強い都市であるため、人間味のないハード先行の都市展開という印象を強くする。
それはともあれ、駅南側の開発の特色としては、ホテルの進出が目立っていることで、すでにホテルグリーンタワー(九一年6月)、ホテルフランクス(同年9月)、ザ・マンハッタン(同年11月)、プリンスホテル(九三年4月)がオープンしており、これらホテルに続いてはニューオータニも大型施設を建設中で、今年9月にオープンする。
しかし、これらホテルをみていても都心部のシティーホテルと異って、人の往来が少なく活気がないせいもあるのか、気軽に施設が利用できるという雰囲気にはなっていない。
ホテルはニューオータニがオープンすることによって、計六棟が機能することになるが、地域での客室キャパは三〇〇〇室にスケールアップする。
これらホテル施設には料飲施設も展開しているわけだが、地域のレストランサービスはすべてビルドインの施設展開で、前記のプレナ幕張はもちろんのこと、幕張テクノガーデン、ワールドビジネスガーデンなども独自の飲食ゾーンを展開しており、地域の飲食ニーズに対応している。
もっとも、地域の飲食ニーズといっても、オフィスワーカー対象のランチサービスを主体にメッセやマリンスタジアムに来る客相手で、沿線や地域居住者の利用はまだまだ少数派にとどまっている。
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地域の施設の主な飲食ゾーンを次のペ‐ジで紹介する。