施設内飲食店舗シリーズ 池袋駅西口「SPICE2」 ケンを競う名門6店舗

1993.07.19 32号 6面

昨年6月10日、池袋西口の東武百貨店がリニューアルして、日本最大の売場面積をもつデパートとして再出発したが、これとほぼ連動する形で5月28日、この隣接地に地下二階、地上八階の「SPICE2」がオープンした。

SPICEは東武デパートの一一~一七階までの七階フロアに展開する“食文化のアメニティ空間”(飲食ゾーン)で、平成3年11月にリニューアルした都内でも最大級のグルメ街として、地域に広くアピールしている。

SPICE2はこれに続く新たな飲食ゾーン(アネックス)としてオープンしたものだが、施設機能としては独立した形態のものであるので、客の集客や賑わいの面ではもう一つのところのようだ。

しかし、施設のコンセプトは先発のSPICEと同一で、「FIESTA(フェスタ)五・感・響・宴」をトータルコンセプトとして、店舗を構成している。

この五つのキーワードは、「こだわり」「アメニティ」「カジュアル」「アミューズメント」「集食」という内容だ。

飲食店舗は別掲表のとおりで、上野精養軒や加賀料理の大志満、ステーキの三田屋本店など計六店舗が出店しており、池袋西口地区の施設内飲食ゾーンとして新たなプレステッジを訴求している。

ビルの一階は地権者のメガネドラッグが、五階から八階まではオフィスが入居しているが、不況のあおりを受けてすべて埋っているわけではない。

六店舗のフロア面積は約七〇〇坪、客席数七五〇席、初年度売上げを二五億円と設定しているが、消費の低迷で二割前後をアンダーに修正しなければならないとしている。(東武百貨店スパイス営業部企画課)

〈東武アネックス〉

▽建物概要‐地下二階、地上八階▽建築主‐東武鉄道㈱▽敷地面積‐一〇七三・七一㎡▽延床面積‐九〇〇〇㎡▽用途別面積‐(A)オフィス・二五〇〇㎡(B)物販店・六六〇㎡(C)SPICE2・二三〇〇㎡駐車場(地下二階)・四〇台

〈SPICE2〉

▽店舗数‐六店舗▽総客席数‐七五〇席▽延床面積‐三八〇〇㎡▽店舗面積‐二三〇〇㎡

◆上野精養軒

SPICE2は池袋西口にあって、近接地に東武百貨店をはじめ、メトロポリタンプラザ、ホテルメトロポリタン、東京芸術劇場などの大型施設が存在するが、しかし、人の流れはやはり百貨店に向っており、他地域への来街はメトロポリタンホテルへの流れを除けば僅かでしかないという印象を受ける。SPICE2は立地的には恵まれた条件にあるが、しかし、一階にディスカウンターのメガネショップが入居していて、飲食ゾーンへのアプローチが弱いこと、また、東武百貨店などからのアプローチが直接につながっていないことから、近接地に位置していながら孤立した形になっている。このため、ビルへの集客力が不十分というわけで、飲食テナントからは地下通路や空中回廊などの設置が望まれている。

日本における西洋料理のパイオニア。明治5年に創業。そのクオリティの高さと歴史の古さは、いまさら説明するまでもない。それが池袋にも出店して、地域のイメージを高めているが、しかし、営業的には苦戦を強いられているようだ。

店舗面積六〇坪、客席数五八席。料理は当然のことながら、オードブル、スープ、魚・肉料理とトータルに揃えており、本店同様の料理が楽しめる。

単品料理は、オードブルがパパイヤに盛り合せた魚介類一八〇〇円、ズワイ蟹とグレープフルーツ二六〇〇円、スープがクリームコーンスープ一〇〇〇円、オニオングラタンスープ一三〇〇円、魚料理は巻き舌平目の海老詰めベルモット酒風味三三〇〇円、オマール海老のクリーム煮六〇〇〇円など、肉料理が仔羊ローストプロヴァンス風三五〇〇円、仔羊肉のステーキ、野菜のスパゲティ仕立三六〇〇円、最上牛フィレ肉ステーキ六〇〇〇円など。

一品一品高品質の素材を使って、ベテランシェフがすべて手づくりで仕上げていくので、単品単価も決して安くはないが、しかし、地域特性を考えて池袋店では収益性を抑えた価格構成だという。

料理はもちろんコースメニューもある。ディナー(A)は月替りの内容で八〇〇〇円だが、スモークサーモンとグレープフルーツ、魚のソーセージ仕立てシェリー酒風味、コンソメスープ、ひらめ・甘鯛蒸煮サフランバターソース、牛フィレ肉ソテーコショウ風味、ヨーグルトのムースにコーヒーというリッチな内容。

このほか、週替りのランチ(三〇〇〇円)および月替りの定食(六〇〇〇円)などもあり、すべて上野精養軒ならではの質の高い料理内容となっている。

客層は八、九割が女性。クラス会、同窓会、パーティなどの使われ方で、当初設定していた法人、会社接待での利用は少ない。

「正直いいまして、厳しい状況です。同じ施設内での価格面での競争もありますし、店自体の構造やビルの施設機能の面で、店の存在が目立たない、入り辛いという雰囲気もありまして、これ以上収益力が落せないという状況です」(佐久間五郎支配人)。

客単価昼二〇〇〇~三〇〇〇円、夜八〇〇〇~一万円。

◆築地竹若

地下一階での出店。店舗面積二一二坪、客席数一八〇席の大型店。店の中央部に日本一といういけす(深さ一・三〇m、横三m、長さ一八m)があり、広大な海をイメージする。

そのいけすを囲む形でカウンター席がゆったりとレイアウトされており、五〇人が座われる。カウンター席の後は座敷、個室になっており、一三〇人が収容できる。

いけすには産地直行の鮮度の高い魚介類が毎日投入される。ヒラメ、マダイ、イシダイ、イカ、イセエビ、アワビなど常時五〇〇~六〇〇匹がストックされている。

店の看板料理はいけす懐石で、季節の魚介類を活造りや磯焼き、懐石料理のコースにして提供するというのが、店の売りものになっている。

夜のメニューは、六〇〇〇円(九品)、九〇〇〇円(一二品)の会席料理、昼は竹若膳一〇〇〇円、築地ご膳一三〇〇円などランチサービスを実施している。

ナマもの、煮もの、揚げもの、焼きものなど単品メニューも豊富に揃えている。中心価格は一〇〇〇~二〇〇〇円前後。

客層は女性客やサラリーマン、会社利用など。平均客単価は昼一三〇〇円、夜九〇〇〇円。本店が築地にあり、他にお茶の水、町田にも出店している。

◆アサヒピア21

店名どおりに桟橋、波止場をイメージした店舗造作で、海に対する憧れとやすらぎを訴求している。いわば、海辺のリゾート感覚にもなるわけだが、昼間はスナックレストラン、夜はアルコール主体のビアレストランという“二毛作”の経営形態にある。

料理の基本はスペインのタバス料理で、大皿に盛り付けて大勢が賑やかに取り合って食べるという料理コンセプトだ。

この料理はスペインの伝統的田舎料理で、「つまみ料理」として、バイキングや飲茶、おせち料理のような内容でもある。

料理は「Lサイズメニュー」(二~三人分)と称して、ポテトスライスとベーコンのソテー、ガーリックソテー、ラ・マンチャ風オムレツ各一〇〇〇円、豆腐と肉のチリソース、鳥肉唐揚げチーズ焼き、長崎名物皿うどん、中華風むし鳥ピリカラソース各一二〇〇円、焼いも風グラタン、豚肉のキムチ炒め、ローストポーク各一三〇〇円など。

このほか、スパゲティ三種一七〇〇円、サラダ三種一二〇〇~一三〇〇円やランチメニュー七種七五〇~八五〇円をラインアップしている。

アルコールについては、生ビール、ハーフ&ハーフ、ウイスキー三九〇~五〇〇円など。

客層は会社勤めの男女や学生などグループパーティや学生コンパ、歓送迎会としての利用も多い。客単価は昼一一〇〇円、夜三〇〇〇円といったところ。新宿、上野にも同じコンセプトの店がある。

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