地域ルポ 御茶ノ水(東京・千代田区) ヤングとアダルト二つの顔
御茶ノ水は神田川の堀割が美しく、人の心を和ませる。この川は湯島、本郷と神田駿河台を南北に二分する。堀割に沿ってJR中央線と総武線が東西に走っているが、鉄道はJRに加え地下鉄丸の内線と千代田線が乗入れており、交通の便には恵まれている。
JR御茶ノ水の駅舎は東側が聖橋口で本郷通りに出、例のアーチ型の橋を渡れば右手に湯島聖堂を見ながら本郷方面へ。逆に聖橋口を出て緩かなスロープを下っていけば、右手にニコライ堂、その先は神田小川町の交差点につながる。
駅西側は御茶ノ水橋口で、改札口前は小さな広場になっており、橋を渡っていけばT字型に外堀通りにぶつかり、周辺に東京医科歯科大や順天堂大およびその付属の大学病院が建並ぶ景観が目に入る。
この改札口前は狭隘な空間であるだけに、終日通勤、通学、来街者の往来で混雑しており、改札口を出入りするのも容易ではない。しかも、交差点に接していて歩道も狭いので、目的地に足を運ぶのもひと苦労する。人の往来が激しい割には、街の空間が狭隘でパブリックスペースが少ない。
やはり、文化の街、大学の街といわれている御茶ノ水も、日本的な猥雑な駅前風景を呈しているのである。御茶ノ水橋口は交差点に出て南に下っていけば、駿河台坂下の明治大学方向へ、東西方向の狭い一車線道路を行けば、西の水道橋方向に池の坊学園と日仏会館、主婦の友社が、東に向へば聖橋口に出る。
この通りは車が西から東方向の一方通行であるが、「茗渓通り会」(瀬川昌輝会長)と称している商店街で、御茶ノ水界隈では最も賑やかな通りを形成している。商店街といっても歩道を含め幅一一m、長さ一八〇mほどの小さな商店街で、店舗数も五、六〇店(八、九割が飲食店舗)とそう多くはない。
しかし、地域への来街者はほとんどが、この通りに集まってきているという印象で、昼どきや夜ともなると大変な賑わいぶりをみせる。御茶ノ水地域は駅の東西改札口から南方向、三〇〇m範囲の駿河台一~四丁目までの地域を中心商業ゾーンとするが、しかし、街の求心力は茗渓通りに集中しており、商業集積はスケールの小さい点と線の存在でしか展開されていない。
「この地域の商店会といいますと、私どもの『茗渓通り会』くらいなものでして、他には商店街としてのまとまりはないんです。一〇年くらい前まではあったんですが、実力者、指導者がいなくなりましてから、商店会も自然解消という感じで地域全体としての連帯感は希薄なわけです。
まあ、これだけ人の往来の激しい地域ですから、お客の確保には不自由しませんから、とくにまとまる必要もないということになるわけでしょうけど、街づくり、地域のイメージづくりという観点からすれば、やはり何らかの形で連携した方がいいと思うんですけど、まあ現在のところは私どもがいいお手本を示すということしかないという状況です」(茗渓通り会瀬川昌輝会長)。