広がる景気不安、外食産業にも波及 戦略変更店が続々出現

1992.09.07 11号 2面

景気不安が一時の「心理的不安から実績不安」へ広がり、日毎に経営環境が厳しさを増している。経済、消費、企業業績など底冷えが浸透。関連指標も軒並み元気がない。当面底ばいが続きそうだが、購買態度も一歩後退までいかないまでも確実に半歩以上後退、活力を取り戻す材料に苦慮している。

外食、飲食店経営もアゲインスト材料が多く、新しい活力の芽が見えにくい。外食成長路線は中長期的に変らないものの、今しばらく足踏みが続きそうな気配だ。弁当、惣菜など引続き「元気印」もあるものの、市場では本格的価格競争期に入った。外食企業や関連会社の真価、実力が試されるシーズンとなった。外食経営者の多くは「当面川幅の拡大より川底掘りに精を出す」と戦略変更を唱える向きも増えている。拡大基調を前提として成長してきた主要飲食店経営者の真随はこれからが見せ場とも言えよう。

経済、消費者行動指標など最新動向をワンポイント・トピックで抽出してみた。

《手抜き許されない》《◆飲食店の業績◆》景気後退、節約意識の急浸透で中小の売上げ減少が顕著。利益も大幅に悪化。メニューも増量やズバリ値下げが目につき、大手FFも初の経常減益がザラ。集客へ割引合戦が続きそうで、“成長外食神話”も年内は弱気に。本格的価格競争時代に突入、手抜き許されず。

《連続して前年割れ》《◆ホテル客室稼働率◆》東京、大阪など主要ホテルの平均客室稼働率は約七割と今年に入り連続の前年割れ。宴席、飲食店も約一割前後売上げをダウンさせており、「二泊で大幅割引き」を実施するホテルが出るなど需要不振は深刻という。高級、高額メニューは二割以上の売上げ減も出ている。

《新規店10%も下落》《◆店舗賃貸料◆》地価、不動産の下落、景気低迷の長期化で店舗賃貸料がジリジリと下がっている。継続店は変らずが多いが、新規店は五~一〇%も下落、特に大都市に顕著。競争の激しい都心部でも値引き要求する店主が増えており、今後大家との価格交渉の行方が注目される。

《15ヵ月連続の低下》《◆有効求人倍率◆》労働力需給が緩和の方向に転じている。6月の求人倍率は一・〇八倍と急低下、昨年3月の一・四七倍をピークに一五ヵ連続の低下。飲食店の新規求人も六・九%、サービス業も四%各減少。今後求人が求職を割り込むのは必至。労働不足の解消、外食産業にも(労働省)

《件数・総額とも最高》《◆企業到産◆》7月の到産件数が前年同月比三八・六%も上回り月間として今年最高となった。負債総額も二四・一%増とこれまた最高。主因は売上げ不振による「不況型」が半数で景気後退の浸透が目につく。今後さらに増加、「回復にはほど遠い」の声が高まっている(帝国データ)

《88年以来の減少》《◆大型店販売動向◆》百貨店、スーパー共に飲食料品以外のすべての商品が前年同月より販売額で減少(6月)。中には食料品も前年割れ店も出現。SMのマイナスは88年以来初(四・七%減)、百貨店も四・〇%減で四ヵ月連続の減少。88年の消費税導入時以来という。当面半歩後退の生活に変身(通産省)

《最低水準に接近》《◆長短金利◆》長短金利が一段と低下している。短期金利の指標となる譲渡性預金(CD)金利は87年5月の過去最低水準に接近、三・八四%となっているし、長プラも下落。長期金利も国債指標銘柄が88年12月以来の低水準にあるなど金利先安感が強く、第六次公定歩合の引下げ観測も。

《17年振り大幅減》《◆残業時間◆》景気後退の影響で6月の残業時間が前年同月比一五・三%も減少。75年以来一七年ぶりの大幅落ち込みとなった。7~8月も高率で景気低迷が勤労者の残業時間に色濃く反映、飲食需要の足を引っ張っている。特に運輸、通信、卸・小売、建設が目立ち、今後も続きそう(労働省)

《“内食復帰”にも》《◆週休二日制◆》月一回以上週休二日制を採り入れている民間企業が八〇%近くに達し、9月12日(土)から学校も初の土休を実施する。時短社会へ歩みを速める。飲食店への影響がどう出るか注目されるが、学給のマイナス分をどこが吸収するのか。“内食復帰”の一要因にも!(労働省)

《前年比1■2%下落》《◆卸・小売物価◆》食料用農畜水産物、料飲食用などいずれも需要が低調で小幅値下がり。輸出入、卸、小売を合わせた総合卸売物価は7月で前年同月比一・二%下落。後半も「これまでの落ち着いた動きに変化はない」見通し。円高と需要低迷が背景にある(日銀)

《本格回復は不透明》《◆株価◆》平均株価(東証)は一時一万五〇〇〇円割れをみせたが、政府、日銀の株価対策で再度約一万八〇〇〇円台に戻している。金利低下で買いの環境にあるものの、本格回復にはなお不透明感が多い。外食上場企業株価も業績低迷で底値は打ったものの反発力は鈍いとの見方も。

《回復へ期待感も》《◆設備投資◆》全産業の92年設備投資計画は前年比〇・〇四%増と横バイ。製造業の大幅減が響いており、一部底入れも見えるが業種で明暗。景気は依然警戒的だが、回復への期待感も出ている。外食分野も模様眺めが多く、当面景気の動向待ち。(経済企画庁)

《食料費2%も減少》《◆家計消費支出◆》7月の勤労者世帯平均消費支出は前年同月比実質三・四%減と85年2月の四・一%減以来七年四ヵ月ぶりの大幅下落。景気後退の影響が家計にも表面化した。食料費は92年実質〇・七%の減少であったが、今7月は外食手控えもあって二・〇%も減少した。(総務庁)

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら