特集中国料理店:注目の若手料理人・吉華料理長・三好直人氏
「休日は趣味で山登りを楽しむのですが、水と空気のおいしい環境で食べる料理って最高においしいんですよね。いまやレストランでもミネラルウオーターが常識の時代。店内の空気を山のように快適にする方法もないものですかね」
そんなユニークな発想を語るのは、東京・高円寺駅近くの中国四川料理「吉華」の料理長、三好直人さんだ。昭和38年生まれの三三歳。この世界に入って一四年目、四川料理一筋の料理人である。現在に至るまで師匠につき「四川楼」「羅山」「アバディーン」「揚子江」で洗い場四年、まな坂三年、セカンドを経て、晴れて料理長の座についた中国料理界期待の若手だ。
三好さんが腕を振るう「吉華」は、二〇年前の創業以来、常連客がほとんどというアットホームな飯店。「年配の常連客に支えられている店なので奇抜なメニューは避け、店本来の味を大切にしています。油を控えめにしたり多少薄味にする年配向けの配慮がいい勉強になりますね」。
「いままでに培った一般的な技術には自信があります。でもここに来て、お客と向き合うという料理人として大事な“気持ち”の理解をさらに深めた気がします」と胸中を語る。
おいしく食べさせる環境作り、すなわち山のような快適な空気をサービスしたい発想もそんな思いから生まれているわけだ。
最近は盛付けのサービスにも研究熱心だ。とりわけ和食会席のやり方に注目している。
「一人前、二人前と、人数別に合わせて皿を飾るツマのあしらい方が変わる。
大皿が基調の中国料理の飾りに比べて、いろいろな工夫があるのだと感心しますね」
定期的に食べ歩きこれからのヒントを模索中だという。
料理技術の応用にも積極的だ。
「基礎が最前提だけれども、素材の特徴を生かしたアレンジはもっとあっていいと思う。例えば、鍋はだにソースはソースの酸味を飛ばし柔らかな甘みを演出できる。火の料理にはチーズのとろみもよく合う」
自宅やまかないでの試みは尽きないとか。
◆「吉華」(東京都杉並区高円寺北二-二-一、電話03・3338・2036)=営業時間午前11時~午後2時30分、午後4時30分~10時、水曜定休