97外食・飲食業界 実力派コンサルタントはこう見る 評論家・太木 光一氏
(1)本年度は税負担の増加、企業収益の伸び悩みと低ベア(ベアなしの企業も出現)、円安の定着などで成長の鈍化はほぼ決定的となり、外食産業の環境は厳しいものがある。
九五年度の外食産業の市場規模は二八兆円で〇・五%増に止まったが、法人需要の伸びが低かったのが要因である。九六年度は狂牛病やO157問題が突発し畜肉、鮮魚、青果など全分野に衝撃が走った。ようやくショックが収まったのは10月に入ってからである。
経済の力強い回復は望めないため、消費者は防衛的な生活に入っている。低価格、実力、しかも美味のメニューが要求されてきた。本年度は新しい発想と対応がポイントとなる。
低成長の日本は世界一安い金利の国であり、地価も大幅に下落し出店のチャンス到来。また賃料も下落し積極的な拡大のチャンスともいえよう。従来は郊外店に注力したが、頭打ち状況で都心型店に力を入れる必要もあろう。コスト安の店づくりが必要。
また、立地による客層を分析し何が要求かを知り、味・価格・量・店イメージ・サービスなどの向上も望まれる。競争は激化が予想されるが、一段の研究と努力が決め手となる。
(2)ローコスト・オペレーションが第一。競争力の強い企業づくりに努める。
(1)冷凍食品を積極的に利用する=年間価格は安定しており、アイテムも増加。味の点でも改良が進んでいる。海外からの冷食も野菜、肉加工、鮮魚など、原料のまま、半加工、調理済みなどさまざま。冷凍点心など加温すれば逸品と変わるものが多い。調理人の大幅圧縮が可能。
(2)つくる手間をはぶくこと=おでん、カレーなどは加温のみでプロの味となり調理場不要。特に鍋は顧客が自ら調理人となるので材料づくりのみ。
鍋は日本の鍋三〇種。韓国の鍋一〇種、中国の鍋(火鍋八五種、砂鍋八二種、汽鍋一六種)と多く、味、価格などで魅力的である。
(3)シチューの開発と研究=シチューは欧米で三〇種以上、大量につくりコストも安く人気者。ハンガリアングーラッシュ、スウェーデンミートボールシチューなど大研究のこと。
(4)材料費が安くしかも美味なものを使う=鶏肉、鶏卵、モヤシ、マカロニ、スパゲティ、牛や豚のひき肉、青魚、赤魚などの利用。
(3)安価、実力、美味、ヘルスが今後伸びる大きな条件といえよう。具体的にいえば、地中海料理、韓国料理、タイ料理、中国料理(広東)。日本料理でみれば鍋などとなろう。地中海料理はスペイン、プロバンス、イタリア、ギリシャ、トルコ、モロッコなどを広く含む。日本のみならずアメリカでも人気者。
理由は(イ)おいしい(ロ)手軽(ハ)バラエティー(ニ)安い(ホ)ヘルシー。主材料はニンニク、オリーブ油、トマト、鮮度の高い魚介など、サッパリとした味つけは日本人にもよく合う。
韓国料理は定着をみたが、一波のキムチ、わかめスープ、辛子明太子、焼き肉から続いて、二波、三波、四波とアイテムは拡大を続けている。チゲ、チョンゴル、〓鶏湯、ナムル、ビビンバは日本人にとけ込んできた。安く、おいしく、ヘルシー、まだ拡大の余地がある。
タイ料理は成長が期待される。特にタイデザートは数十種あり、ヤム(サラダ)とともにヒットメニューとなるものと思われる。
また、スターバックスのエスプレッソコーヒーが人気化し、急展開もみられよう。