低価格時代の外食・飲食店 「札幌ラーメンどさん子」 先発の強さにかげり
都心の街中でラーメンチェーンを見かけることが少なくなった。バブルがはじけて、物件の取得が容易になっている面もあるが、しかし、客数が取れる好立地は限られる。投資に見合って採算のとれるロケーションは、ビルインともなれば、賃料は坪当たり三万~四万円と相変わらず高値の水準だ。自己物件を別にすれば都心出店でのチェーンビジネスは、ファストフード並みに高回転でなくては採算はとれない。「札幌ラーメンどさん子」と「くるまやラーメン」は、ラーメン業界一、二位のビッグチェーンだが、店舗展開はすでに都市郊外や地方都市のロードサイドにシフトしている。しかし、この両チェーンの出店、経営戦略は対照的だ。どさん子はFC出店だが、マーケティングにほころびがあって業績は低迷状態。くるまやは直営とFCの二本立てのチェーン展開で、完全ではないものの手堅い経営。競合激化の時代、サバイバルをかけて両社今後のチェーン戦略が注目されるところだ。
ラーメンチェーンといえば、「札幌ラーメンどさん子」をイメージするが、最近は都心で見かけなくなった。第二次ラーメンブームに湧いた八〇年代には、全国に一〇〇〇店以上を展開していたが、現在は八〇〇店強に減少している。
FC加盟店の老朽化、オーナーの高齢化、集客力のダウンなどによる退店、さらには都心での物件確保の困難さと入居条件の高さといった出店環境の厳しさで、チェーンスケールが縮小しているのだ。
しかし、店舗(FC)展開をストップしているわけではない。都心での出店は活発ではないが、郊外ロードサイドや地方都市での出店に、チェーン戦略をシフトしている。
出店エリアは首都圏を軸に北海道から九州まで全国におよんでおり、国内一、二位を争うチェーンスケールにある。
どさん子ラーメンは創業者の青池保氏が一九六七年、今から三〇年前に東京・墨田区(両国)に一号店をオープン。そして、この年にFC展開を開始した。
FCブームに乗って加盟店はハイテンポで伸び、四年後には五〇〇店、一〇年後の七七年2月には一〇〇〇店舗のチェーンスケールに達した。
この間の七四年3月には海外第一号のFC店として米ニューヨークに出店、その後チェーン化を積極化して、一一店舗を開設した。
しかし、賃料やランニングコストの増大などで、営業が悪化、現在ではわずかに三店舗が残っているのみだ。
国内においてもラーメンチェーン乱立による競合の激化、またバブル経済破綻による消費の低迷などで、業績が低下してくるとともに出店が鈍化、FC展開の勢いは止まった。
「確かに都心での出店は少なくなりましたが、郊外立地では意欲的にやっていますよ。今3月期は九六年度実績として三〇店の上乗せになる見通しです。昔ほどの勢いはないかもしれませんが、FC展開をやめているわけではありません。一オーナーで最高九店舗を展開している加盟店もありますから。ただ七〇年代や八〇年代に比べ市場環境がはるかにシビアになってきているのは否定しません」(どさん子FC本部)
「下期も既存店売上げは低迷が続き、よくて五%減程度(上期七%減)。出店も通期で直営八、FC三三店と遅れ、売上げは前年並みがやっと。経費節減、食材内製化努力などで、経営回復狙う」。東洋経済の会社四季報九七年一集新春号の経営指標だ。
どさん子は九〇年2月に株式を店頭登録した。その後も資金調達能力を生かして、直営出店や業態の多角化などに乗り出したが、しかし、これも思惑どおりにはいかず、不発という状況に帰している。
どさん子はストアブランドのとおり、長く赤テントの北海道マークを使って、ちょうちんをぶら下げた店舗造作でチェーン展開を推進してきたが、このイメージを払拭しようと、九四年4月、銀座にカジュアルレストランスタイルのペリカンマーク(キャラクター)を使った「DO‐SANKO銀座」を出店した。だが、このタイプの店はこのあと東京・小伝馬町に展開したのみで、増えていない。
もっとも新規出店のどさん子ラーメンについては、ペリカンマークとローマ字のロゴを導入した明るい店づくりになっているが、しかし、七〇年代、八〇年代に加盟したFC店の多くは北海道マークそのまま。しかも老朽化が進んでいる状態なので、どさん子チェーンとしては統一性に欠けるといった存在だ。
店の老朽化は「クリンリネス」の精神をスポイルし、店内外の汚れを目立たせることにもなる。集客力が落ち、売上げダウンするのは当然の成り行きだ。
業績の不振は前稿でも述べたとおりだが、株の面でも五〇〇円台の安値で推移しており、寄りつきがないという結果になっている。
ちなみに同じ店頭株式のドトールコーヒーは四五〇〇円、ワタミフード三三〇〇円、松屋フーズでも一二〇〇円をつけている。
どさん子チェーンのパワーダウンは、株式市場でも読み取られているのだ。業態の多角化については、九州とん骨ラーメンの「活力一番」をはじめ、ラーメンと居酒屋「和風どさん子」、喜多方ラーメン「壱番屋」、京風ラーメンと甘味処「花いちもんめ」、ヌードルバー「CHA‐YA」、回転寿司「十人十色」、持ち帰りすし・弁当ショップ「味の花」、居酒屋「市場」など盛りだくさんだが、しかし、和風どさん子、喜多方ラーメンはスクラップしているし、ほかについても数店どまりの伸び悩み。かろうじて活力一番が二〇店を展開しているにすぎない。
ハード先行の出店戦略。ソフトも人材のストックもない。オーナー経営、ワンマン体制の経営が、事業の発展を阻害しているという印象を強くする。
・企業名/(株)ホッコク
・チェーンブランド/「札幌ラーメンどさん子」、ラーメンショップ「活力一番」ほか
・創業/昭和36年5月
・会社設立/昭和43年4月
・本社所在地/東京都中央区日本橋人形町三‐一一‐一〇(Tel03・5695・2001)
・資本金/一四億三二〇〇万円
・代表取締役社長/青池保
・従業員数/二〇〇人
・事業内容/どさん子ラーメン、活力一番ほかチェーン展開
・出店数/直営三九店、FC七七三店、計八一二店(九六年12月末現在)
・売上高/二六一億円(九六年3月期、前年比三・五%減)