シリーズ・今年の中部外食 人脈 よし川・吉川幸枝社長 ホンモノの価値試される好機

1997.02.17 121号 19面

不況、不況って恐れるけど、こんな時だからこそホンモノの良さが認められるのではないですか。かえって私は楽しみにしてるんですよ。好景気に努力なく浮かび上がった店は、必ずふるい落とされるわけですからね。それと今の低価格戦略は解せませんね。低価格でそこそこの料理を提供するというのは、プロの料理の考え方ではないです。

もちろんビジネスですから、儲けようという気持ちはあります。でも私の場合、それよりも食文化をつくる使命感が先に立つんですね。今名古屋に何が欲しいか、を常に考えそんな夢を現実にすることが経営者の仕事だと思っています。

たとえば、一五年前にバチカンの教会から小道具すべてを、うちの仏料理レストラン「レトワール・ド・ジュアン」へ持ち込み結婚式ができるようにしました。土・日は予約でいっぱいですよ。

それと、今年の春には根尾村から重要文化財の薄墨桜を移植し、日本庭園を眺めながら料理が楽しめる店をオープンする予定なんです。敷地は五〇〇坪で、池下駅周辺にある「よし川」のレストランや和食店の続きで全部合わせると数千坪になります。自分の理念を他と隔絶したところで「よし川ビレッジ」を確立し守るためにも、次々に土地を広げて店を増やしてゆきたいですね。

私が考える食卓っていうのは、皿の上の料理だけでなく庭があり四季折々の空気が感じられる自然をも含んでこそと考えています。都心がコンクリートジャングルになりつつある中、春には桜、秋には紅葉が舞う自然あふれるスペースを広げるのはすてきでしょ。楽しみにしていてください。

(社長談)

父亡き後、母と二人で名古屋へ。住込みで働きながら県立旭丘高等学校を卒業。二四歳で(株)大幸マンションを設立する。その後、ひもじい思いをしたころのおいしいものを売るほど食べてみたい気持ちから飲食業クークーチェーン、よし川グループ、(株)三芳商事、(有)よし川を設立し、現在二十数店舗を経営する。喫茶、和食、イタリア料理、フランス料理と業態はさまざま。不況をものともせず、これからの店舗計画は次々にすすめられている。従業員およそ二七〇人、年商三五億円。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら