百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「ハゼ」

1997.11.10 26号 14面

今回は魚分野、肉分野からひとつずつ、栄養の宝庫的な食材をピックアップ。ハゼは9~2月までが旬。レバーはカゼをひきやすいこれからの季節、積極的に摂取したい。

(食品評論家 太木光一)

ハゼはマハゼの略称で、種類が非常に多く世界的にみると六○○種に及ぶ。ほとんどが海魚で一部に淡水魚もみられる。

ハゼは全長で三○㌢近くにも成長するが、一般的には一五~二○㌢程度である。日本では北海道以南から九州にかけて、アジアでは韓国・華南・海南島に分布する。

内湾、河口から大河の下流の流水域の泥底に棲む。秋に入ると松島湾・東京湾・浜名湖・伊勢湾をはじめ日本全国いたるところでハゼ釣りが始まる。貧食性のため、人気の高い魚である。秋によく釣れるので彼岸ハゼ、あごが張っているのでババハゼとも呼ばれる。

外見はややグロテスクであるが、肉は白身で淡白な味である。9~2月までが旬で、最も味がのるのは晩秋から初冬にかけてである。

釣りたてのハゼは刺し身が最高。身を細ぎりにしてわさび醤油かぽん酢醤油がよく合う。また脂肪が少ないので揚げ物に向く。ハゼの天ぷらはキスにも劣らない。衣はなるべく薄衣にした方がパリッとして美味。適温は一八○度Cで揚げること。身の白さともろさのバランスが良い。

特有の香気を持ち刺し身や天ぷら以外に甘露煮・佃煮・昆布巻き・煮びたし・あめ煮などに向く。また焼き干したものは、じゃこ同様に吸い物やみそ汁のだしに使うと、かつおぶしと異なった味わいが楽しめる。

食品の目安として中一尾で三○㌘見当、脂肪は非常に少なく一・○%である。同じ白身の魚と比べるとスズキ二・五%、クロダイ一・七%、カレイ二・二%、ヒラメ一・二%である。

水分が八二・二%と多く身がもろくエネルギーも低いが、鉄とビタミンB1は多い。しかし佃煮の場合、保存性も一段と高くなる。

佃煮は骨と内臓を一緒に食べるため、無機質の摂取は急増し理想食と変わる。特にカルシウムは生魚の時と違って急増。生の時のカルシウムは一○○㌘当たり一五㍉㌘であるが佃煮となると一八○○㍉㌘と一二○倍も増える。全食品の中で干しえび二三○○㍉㌘、煮干し二二○○㍉㌘についで多い食品となる。

現代は飽食の時代ですべての栄養素を摂り過ぎ。この中でカルシウムの摂取のみが不足なのである。カルシウム不足は骨や歯が弱くする。精神面でもイライラして怒りやすくする。特にお年寄りにはカルシウムの供給源として望ましい食品と呼べよう。

ハゼの欠点は鮮度落ちが早いため、一般の魚屋には流通しないこと。刺し身にしても生きているうちにつくらないと透明さがなくなり身がしまらない。刺し身はうまいが釣り人以外にはなかなか食べられないのである。

ハゼは湧くように増えるといわれるほど繁殖力の強い魚である。釣りにしてもタイのように難しくなく素人にもよく釣れ、時には一束(一○○匹)、二束(二○○匹)と数えられるほどである。肉には淡泊なうま味があり固定したファンも多い。まさに庶民とお年寄り向きの魚である。

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