飲食店成功の知恵(59)開店編 お店のコンセプトのつくり方

1995.02.06 69号 10面

出店希望者の相談を受けて、「あなたはお店のコンセプトをどう考えていますか」と聞くと、目を丸くする人が多い。どうやらコンセプトなど、最先端の店づくりをしている人たちとか、大手の飲食企業にしか縁のないもの、くらいにしか考えていないらしい。しかし、本来コンセプトとはすべてのお店が持つべきものである。コンセプトなどと、少し前の流行語を使うからややこしいのなら、オープンさせたいと思っているお店の具体的なイメージ、と言い換えてもいい。

飲食店のオープンを夢見ることは、実に楽しいものだ。しかし、ただ漠然とした夢を抱いているだけでは、お客に支持されるお店づくりはできない。お店づくりとは、商品、サービス、雰囲気のすべての方針である。それが決まらなければ、本当はお店はオープンできないはずなのだ。現実には「似たり寄ったり」のお店が少なくないが、そうなってしまうのは結局、コンセプトのないままの成り行きのオープンだからである。

では、夢に具体性をもたせて方針として組み立てるには、どうすればいいのか。素人の人には、これが意外とむずかしい。そこで私は、お店の5W2Hをイメージしてみるようにすすめている。

飲食業の5W2Hとは、次のような意味を持つ。

・WHAT=なにを=業種および主力商品

・WHY=なんのために=お客の利用動機

・WHO=だれが=主な客層

・WHEN=営業時間およびお客の主な利用時間

・WHERE=どこで=出店立地

・HOW=どのように=売り方のスタイル、 お客にとっては楽しみ方のスタイル

・HOW MUCH=いくらで=客単価

これら七つの要素に具体的な商品名や価格、出店立地などを当てはめて、そのお店がどのように利用されるかストーリーとして考えてみるのだ。客層と立地が合わなければ、どちらかを優先して修正する。利用動機に対して客単価は適正か。それは別の立地ではどうなるのか‐‐という具合に、これまで漠然と温めてきたイメージを順々に当てはめて、オープンイシミュレーションをしてみるのである。

このシミュレーションを繰り返していくと、自然と「自分がオープンしたいお店」のコンセプトの骨格が出来上がっていく。内装や料理の盛りつけ、サービス要員のユニフォームなどは、スケッチしてみるといい。自分のイメージを固めるためなのだから、絵は下手でもいっこうにかまわない。ストーリーを何度も練り直しながら、その一コマひとコマを現実に引きつけていくわけだ。

ところが、冒頭でいったように、ふつう小規模店はこういうイメージづくりをしない。どこかで見たお店の印象にとらわれたまま、設計・内装業者に依頼する。当たり前の商品構成をする。型にはまったお店では「似たり寄ったり」になるのも当然であろう。

サービスや雰囲気づくりにしてもそうだ。「こういうお客に、こういうふうに楽しんでもらいたい」という強烈なアピールがあってはじめて、来てほしいお客は来てくれる。固定客とは、そういうお店の方針とハートに共感してくれた本当の理解者である。ありきたりのお店になかなか固定客がつかないのは、お客に訴えかけるものがないからなのだ。

お店の5W2Hをさまざまな角度から検討するには、いうまでもなくいろいろなお店の事例を知ることが必要だ。そのためにも、日ごろから業種業態にこだわらない店舗見学を心がけてほしい。ヒントは思いがけないところにころがっているものだ。

フードサービスコンサルタントグループ

チーフコンサルタント 宇井 義行

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