特集・多様化する宅配 お好み焼きの「KEI太」惣菜にも参入
ワタミフードサービス(株)(東京都大田区、03・5703・2255)の手掛けるお好み焼きデリバリー「KEI太」は、惣菜のデリバリーを全店で開始した。同社が展開する居食屋「和民」の人気メニューを家庭に向けて宅配する。日常食をメニュー化することで下降線を辿っていた「KEI太」のオーダーをアップさせるのがねらい。また、「和民」と「KEI太」で食材を共有化して、仕入れのスケールメリットを追求する。将来は、「和民」と「KEI太」をワンセットにして住宅圏へ進出する考えだ。
今回惣菜へ乗り出したわけは、成長著しい中食市場に着目したものだが、要因はほかにもある。
ピザやお好み焼きのデリバリー店が飽和状態にあること。専門的ならそれらのメニューはリピート頻度が低いこと。既存の展開について消費者の反応が「利便性はあるものの価格が高い」とする声が多いこと。つまりいままでのデリバリーフードは流行が先行する色彩が強かったが、今後はユーザー本位に立ったマーケティングが優先すると判断したのだ。
また、生活に密着した惣菜をメニュー化することで、リピーターのオーダー頻度をアップ、ピザやお好み焼きのターゲット外であった新規ユーザーを獲得する好機にもなるわけだ。「メニューコンセプトは日常食」(渡辺美樹代表取締役社長)と説明する。
惣菜としてメニュー化したのは、「和民」の人気アイテム上位二一品。ほかに、好みの惣菜をチョイスした弁当セット、予算に応じたおつまみセットなどもある。単品の価格構成は二八〇~四八〇円で、一一〇〇円以上からデリバリーする。
「和民」のメニューは、冷食を一切使用しないフレッシュな食材と手づくり感を売り物にしているが、「KEI太」でもそれを踏襲して本物志向をアピールする。
食材の下ごしらえは近隣の「和民」が一括して受け持ち、「KEI太」が直接日参して調達する。「KEI太」はコックレス店であるため、コンベヤーオーブン、フライヤーを主力に調理オペレーションをマニュアル化している。下ごしらえの段階で、そのマニュアルに適するサイズに食材を整形する。例えば、既存のピザ、お好み焼きの焼成マニュアルは約六分。新メニューの惣菜もその設定で仕上がるように大きさ、厚さを工夫している。
食材調達については「KEI太」が、「和民」に日参して行うため、前者は在庫管理とそのスペースが省けるメリットがあり、後者にとっては一括した食材仕入れによるスケールメリットが生まれるという。
「仕入れのスケールメリットは五〇店舗を超えてから一気に上がる。現在、和民が三四店舗、KEI太が一八店舗ですから合わせると丁度その数字になる」と自信をのぞかせる。
一方、多アイテムのメニューを同時にコンベヤーオーブンで焼成することで、メニューの香りの混合が気になるところだが、「今回は煙や香りの強いメニューを外したが、そうしたメニューの要望が多ければコンベヤーオーブンの複数ライン化も辞さない」と強気。
保温管理については、「日常食として展開するため商圏はいままでのように広くなく、せいぜい一キロメートル位でしょう。デリバリーの時間短縮につながります。また、冷食は一切使用せず、フレッシュ主体ですので、冷えたとしても温め直せばおいしくいただけます」。
惣菜は、日常食のため商圏のユーザー密度が濃いというわけだ。同時に食べごろ重視のデリバリーピザと異なるセールスポイントを打ち出している。
販促については、商圏を〇mから数十m間隔で広げるミクロ的なポスティング戦略を講じている。初回は五〇〇枚。まだオペレーションの構築期間であることと、日常がどれだけ反応あるか分からないことが理由だ。「下手なセールスは過剰オーダーを招く可能性があり、それは店舗オペレーションの欠落や死に客を生じさせるおそれがある」と慎重だ。
今後、「KEI太」「和民」を一セットにした出店攻勢をかける方針。具体的には、郊外住宅立地の駅前店として「和民」を、そこから離れた住宅立地に「KEI太」の出店を計画している。
◆四八〇円メニュー=串盛合わせ(四本)、イタリアンハンバーグ、照焼ハンバーグ、若鳥トマトチーズ焼、ひとくちヒレカツ、紅鮭のバター焼、いかの照焼
◆三八〇円メニュー=とり串(三本)、なんこつ串(三本)、つくね(二本)、若鳥照焼、フライドチキン、自家製コロッケ、焼いも
◆二八〇円メニュー=コーンバター、ポテトフライ、ごはん(みそ汁付)
◆その他=焼おにぎり(三三〇円)、コールスロー(二五〇円)