全国で減少続く「街のパン屋」を救え…ベンチャー企業の挑戦

「街の共有財産」でもあるパン屋の現況は厳しい

「街の共有財産」でもあるパン屋の現況は厳しい

パンの消費がコメを抜き、高級食パン専門店には行列ができ、各地のパンフェステイバルは盛況と、空前の人気のパン市場だが、個人事業主のパン店いわゆる「街のパン屋」は減少が続く。NTTタウンページの調査では、2007年と2016年比較で約1800件が減少。商圏内の人口減少や長時間労働に加え、利幅が少ないなど厳しいパン屋の現況に、家業を継がない、あるいは継がせたくないなどの理由で自主廃業を選択するケースが多く、「街の共有財産」でもあるパン屋が全国から消えている。

提携パン屋に福利厚生サービスを無償提供

こうした状況に歯止めをかける取組みを展開するのが、ベンチャー企業のパンフォーユー(矢野健太社長)だ。「ローカルパン市場の開放を通じて地域経済に貢献する」をテーマに、地方のパン屋の人気のパンを自社独自の冷凍技術でおいしさを保ちながら、保存性を持たせ、オフィスや個人に提供するプラットフォームを構築し、地方のパン屋の新たな販路の創出を実現した。

「街の共有財産」でもあるパン屋の現況は厳しい

新たな挑戦として、福利厚生業務最大手のベネフィット・ワンが提供する福利厚生サービスを、提携するパン屋にパンフォーユー社負担で提供する取組みを12月から開始した。

充実した余暇や学びの機会を提供することで、提携先のパン屋との信頼性をさらに高めるとともに、本来的に創造性が高いパン屋の仕事をよりクリエーティブなものにしてもらい製造するパンの価値向上につなげる狙いだ。

地方のパン市場を活性化するプラットフォームを構築

日本のパンの市場規模は約1兆5000億円、地方のいわゆるローカルパン市場規模は、約3700億円。矢野社長は、この狭い商圏で商売する、地方のパン屋の魅力ある商品を買い取り、同社独自の冷凍技術を活用し、より広い市場で勝負できるプラットフォームを構築した。

パン屋の仕事をよりクリエーティブなものにするためサポート

地方のパン屋からパンを仕入れ、独自の冷凍技術でおいしさ鮮度と保存性を両立したパンをオフィス向けに提供する「オフィス・パンスク」は、2018年9月のサービス提供開始から約1年で大手企業を中心に、導入拠点は140拠点を突破した。

高い成長を示す背景には、健康経営や働き方改革さらには、従業員向け福利厚生のBtoE(Business to Employee)への関心の高まりがあり今後も事業は拡大する見込みで、現在、群馬県を中心に15店舗のパン屋と提携しているが、2020年2月までに全国に広げ30店舗まで拡大する計画だ。

自営業の家に育ち、大企業の福利厚生に衝撃

パン屋に福利厚生サービスをパンフォーユー社負担でパン屋には無償提供する新たなサービスを始める背景には、自営業を営む家に生まれた矢野社長の実体験が存在する。

幼少期、父親が、朝早くから仕事に出掛け休日も仕事のことが多く旅行すらまともに行けない環境で育った矢野社長は、京都大学を卒業後、電通に入社。ベネフィット・ワンが提供する優待でレジャー施設などを利用でき、会社の補助付きで旅行ができるという福利厚生の体験に衝撃を受けたという。

パンフォーユー矢野健太社長

焼きたてパンを冷凍で卸すだけというパンフォーユーのプラットフォームを活用すると、焼き上がりの時間を気にすることなく、自店の作業工程に無理なく組み込め、売上げ増につながる。

こうして生まれた「時間」を活用して映画鑑賞やレストランでの食事、さらには、経営やマーケティングなどの学びの時間として充実した余暇を多忙なパン屋に過してもらうことが矢野社長の願いだ。

今回のサービスでは、ベネフィット・ワンが提供する福利厚生サービス「ベネフィット・ワン」の中でも福利厚生・健康支援・教育・研修などすべてのサービスが受けられる「ベネフィット・ステーション 学トクプラン」を提供する。

福利厚生サービスで一般的な飲食店や宿泊施設の割引利用のほか、健康情報の発信・健康診断データの管理、健康リスクの判定などを行う「健康支援」、さらに、いつまでも学び続け、スキルアップしていくための800講座を揃えた教育・研修サービス「ベネアカデミー」も利用可能となる。このサービスを利用するためには、パンフォーユーと提携する必要がある。問い合わせは(https://pansuku.com/partner)まで。

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