あの店この店味な店 カラオケルーム「うたうんだ村」大庄グループ
カラオケ市場はハード、ソフトともに進化し、また、成熟化した現在、単に歌わせるだけでは客は満足しなくなってきている。カラオケ機能プラスアルファの時代に突入しているのだ。
いい雰囲気とおいしい料理とサービス。これが付加されれば、施設への来店動機を大きく喚起することができる。うたうんだ村の出店の狙いはここにある。
八重洲口店の営業形態は、午前11時30分から翌日の午前5時まで。カラオケ施設が深夜や翌朝まで営業するのは珍しくないが、この店は二階の庄やチェーンが午後5時から翌朝4時まで営業しているので、それに連動する形での営業策をとっているのだ。
料金体系は、時間帯別でルームチャージが異なるだけで、人数や部屋の大きさに関係なく、すべて「歌い放題」のシステムにある。
利用料金は、四~六人で利用する場合、ワンルーム一時間当たりの料金は、ランチカラオケタイム(月~日)=午前11時30分~午後2時までが一〇〇〇円、金・祝祭日を除く曜日の午後2時~午後5時二〇〇〇円、午後5時~午前5時四〇〇〇円、ゴールデン・週末タイム=金・祝祭日前日、日曜日の午後2時~午後5時二〇〇〇円、午後5時~午前5時が五〇〇〇円というシステムになっており、やはり曜日に関係なく、午後5時以降の利用は、ランチタイムの四倍、五倍と高い料金設定になっている。
しかし、これは利用人数で割ればすぐ、一人当たりの料金は大きく低減する。平均客単価は二三〇〇円くらい。料理のオーダー分は直接料理を提供した店の売上げにアカウントされるので、「うたうんだ村」の売上げには貢献しない。
このため、各店の集客力と売上げ動向をみながら、うたうんだ村独自のメニュー提供も強化していく考えをもっており、現在、そのタイミングをみている。
客層は、二〇~三〇代の若いサラリーマンやOLを主体とする店舗周辺のオフィスワーカーだが、この利用形態は各店舗からの予約が五割、直接の利用が五割という内容で、カラオケ併設の居酒屋施設としてはバランスのとれた利用形態になっている。
「ランチカラオケといっても、他の四店でもランチサービスをやっていますから、この店で客数を伸ばすというわけにはいかないのです。この店は主体ではなく、あくまでも自店の居酒屋の付加価値と来店動機を高めるための集客装置であるわけなんです」(うたうんだ村八重洲口店主任代行華山貴志さん)
居酒屋とワンセットのカラオケ施設ということであれば、図式的にみれば、主役は居酒屋ということになるが、このためには、パーティー・宴会客などグループ客を多く集客することが不可欠である。それに加えて、カラオケ自体の楽しさ、オモシロさも訴求されていなくてはならない。
ハードは、通信カラオケ「GIGA」の最新設備だが、この店の場合は、華山主任のタレント的オモシロさ、また、カラオケ教室の実施や深夜(午前0時~5時)の歌い放題(一人三〇〇〇円)など各種販促を実施しているので、複合タイプの居酒屋施設という魅力とともに独自の集客力を発揮している。
「うたうんだ村」とはズバリのネーミングだが、これは庄や、やるき茶屋、949など、居酒屋、串焼きチェーンを展開する大庄グループ(本社=東京・大田区、平辰会長)が経営するカラオケルームだ。
基本的には庄やとの併設で展開しているカラオケ施設で、現在、綾瀬、牛久、古渕、取手、東京・八重洲口店の五店舗を出店している。
店舗規模は五〇坪、一〇~一二室、収容人数一〇〇人前後というのが標準で、一店舗当たり月商一〇〇〇~一二〇〇万円が営業の目安だ。
八重洲口店は、昨年12月オープンした通信カラオケを導入した最新店舗で、五二坪、一一室、八〇~一〇〇人前後を収容する。同社のカラオケ施設としてはスタンダードの規模だが、ビルの三階に入居し、一階が「がんばり屋」(カニ、エビ料理が看板の居酒屋、六〇坪、一四一席、月商一八〇〇万円)、二階が大庄グループ主軸の「庄や」(大衆居酒屋、七〇坪、一七五席、月商二一〇〇万円)、四階「オーララ」(欧風田舎料理、五二坪、八五席、月商一五五〇万円)、五階「大和路」(しゃぶしゃぶ・割烹・会席料理、五二坪、六〇席、月商一二〇〇万円)など、四店舗とジョイントする大型の複合施設だ。
場所は、東京駅から外堀通りを渡って日本橋寄り一、二分のところ。ビルの外装がカラーペインティングでにぎやかに人目を引く。八重洲は、ビジネス街でありながら、飲食施設の多い地域でもあるが、夜は飲み屋街に変身するといった二つの顔をもつ。
このため、単独のカラオケ店舗のほかスナック、パブ、居酒屋など併設のカラオケ施設も多く、連日ビジネスマンたちの来街で夜のにぎわいをみせている。
うたうんだ村は、こういった立地環境での出店だが五階建てビル全体が単一企業の飲食施設で構成されるというのは珍しい。このビルは以前は化粧品会社が入居していたが、経営不振で立ち退くことになったので、そのあとを借りてのテナント出店だ。
一階から五階まで延べ営業面積は二八六坪、総収容人員六〇〇人で、地域では最大の複合飲食施設だ。うたうんだ村はそれらの店の宴会客、また、地域のビジネスマンたちのカラオケニーズに対応して出店しているもので、その目的を十分に果たしている。
このうたうんだ村の大きな強みは、宴会(のみ会)から二次会のカラオケにスムーズに移行できること、そして、各店の好みの料理がオーダーできることにある。
カラオケ利用は当初からセットにしておいてもよいし、途中から思いつきのままに予約をしてもよい。同じビル内での併設施設であるので、その利用は自由だ。
居酒屋チェーンなどのカラオケ併設はプロの料理と質の高いサービスを提供することで、既存のカラオケ施設との差別化を図り、集客力を発揮する。