三菱食品、21年消費変化を予測 地方・男性市場重要に 生活や価値観が急変
三菱食品は独自分析による21年市場の展望や消費のキーワードを示した。来年は大都市周辺に位置する地方部の存在感が増すほか、食への関与が高まる男性層への対応がポイントとなると予測。併せて個人レベルでも急速に進んだデジタル化をいかに需要喚起に結びつけるかが重要とする。日本を覆った混迷が明け、コロナ下で新たに生まれた芽が成長する年となると期待をかける。(丸山正和)
14日に同社の小山裕士マーケティング本部長が「20年食品市場の総括と21年の消費の展望」と題して説明した。この中で小山氏は、コロナ下での働き方や価値観の変化により、大都市に住み続けたいといった意向が大きく減少した一方、地方の県庁所在地や中核都市に住み続けたいという意向が高まっていると指摘。「コロナ前に起こっていた東京への一極集中が止まり、首都圏近郊を選択する流れがすでに始まっている。この傾向は当面続く」(小山氏)との見方を示した。
通勤通学が多少不便でもプライベートの環境を重視した都市周辺部や地方の都市部居住層は、この先も徐々に拡大していくと考えられる。そうした中、21年は大都市周辺の地方部の人口や単身層、ヤングファミリーが増加していくなど、人口や世帯構成が少しずつ変化。それら地域での食市場の拡大に伴い、一品単価レンジの拡大、惣菜利用の増加、1品当たり量目の減少といった、いわば都会化が生まれる。この変化に対応し「食品の販売戦略も変えていかねばならない可能性がある」(同)と指摘する。
男性マーケットについては、コロナ下で20代から30代の既婚男性が他の層よりも食事や調理を楽しむ傾向が強まったとの独自の調査結果を紹介。この層は男女の雇用機会均等の考え方が浸透しており、年収格差がない平等意識を背景に、調理に対する価値観が未婚層や40代以上と大きく異なる。
この差は今後も拡大が想定される上、小売店舗のデジタル対応や商品やサービスの社会貢献を重視する意識が高い。こういった層を取り込むには、デジタルを活用した効率的な空間の提供をはじめ、商品や生産者のストーリーを伝えるなど、こだわりを刺激する仕掛けが重要になってくるとみる。
コロナ影響によって産業側のDX(デジタルトランスフォーメーション)の意識は格段に進んだが、在宅勤務やオンライン会議の活用で個人レベルでもデジタル許容度が上昇した。
ただ、ネット購買の実態を見ると食品のオンライン購入は増加傾向にあるものの、依然としてコメや飲料など重量がかさばる商品のほか、介護食やベビーフードなど喫食者と購買者が異なる代理購買商品に偏りがある。
21年はデジタル技術を活用したリアル店舗の効率化、予期しない商品に出合える楽しさをもったネット購買を、それぞれ実現していくことが求められる。リアルとネットを横断した効率性と楽しさを追求する提案により、さらなる需要の創出に結びつけることができると強調した。