名店の逸品 冷麺の大革命 叙々苑「銀盤冷麺」
コロナ禍の収束と焼肉の復活に向け、久々に明るい話題の新料理が登場した。「叙々苑」(直営69店舗)が満を持してメニュー化した「銀盤冷麺」である。その特徴は「少量のスープを麺に絡める」こと。冷やし中華に似た、いわば「汁なし冷麺」ともいえる斬新な趣向だ。5月下旬の名古屋栄店を皮切りに全店に順次導入。単品のほか、コースではミニサイズで提供し、滑り出しの評判は上々だという。「冷麺の大革命」(新井泰道会長)と期待を寄せる銀盤冷麺を紹介する。
●スープを減らしスープを絡める 辛口酢ダレで新境地を創造
「銀盤冷麺」は、汁なしタイプの冷麺をステンレス製の平皿に盛り付けたもので、スープが少量のため、麺の存在感と具材の彩りが映える。また、別添えの「辛口酢ダレ」を加えると、鮮やかな見栄えが演出され、締め料理に好適な「酸辣」のアクセントが際立つ。
開発のきっかけは、大半のお客が冷麺のスープを残していたこと。せっかく作ったスープを残されるのは、もったいなく、忍びない。ならば「スープが残らない冷麺を作ればよい」(新井会長)と発想を変え、汁なしタイプの銀盤冷麺を打ち出した。
調理ポイントは、ゆでた麺を冷水でしっかり締めて、冷やしスープをまんべんなく絡めること。そして、絡めたスープが落ちてたまらないよう、平皿いっぱいに麺を広げること。何より、味の変化を演出する辛口酢ダレの独創性がポイントだという。
話が飛ぶが、冷麺の食文化は、朝鮮半島のキムチとオンドル(床暖房)により育まれた。トンチミ(キムチの漬け汁)の活用が冷麺スープに発展し、温かいオンドルの環境が冷たい味覚を受け入れた。そして冷麺は家庭料理であり、トンチミの量も限られるため、元来の冷麺はスープが少なかったとみられる。つまり冷麺のルーツはトンチミを絡める程度の「あえ麺」だったと推測されるのだ。
そう考えると、本場の元祖も銀盤冷麺のようなあえ麺だったのかもしれない。
●冷麺の復活に期待 締めの定番を現代風にアレンジ
(株)叙々苑・新井泰道代表取締役会長
冷麺は締め料理の定番です。焼肉の後に冷たいスープ飲み干す爽快感、脂ぎった口内を洗い流す清々しさは格別です。しかし近年は昔ほどの存在感はありません。昔は注文ごとに素手で麺をこねていましたが、今は一部を除き、乾燥麺で省力化しているのが普通です。
存在感が弱まった理由は、日本では冷たいスープを飲む習慣があまりないからです。麺類は温かいスープか、ざるそばのように漬け汁で食べるのが普通です。つまり、夏場はともあれ年間通して冷麺を受け入れる土壌はなかったのです。実際、冷麺のスープはほとんどが残されてきました。せっかく作ったスープが残されるのは、まさに肩すかしです。
とはいえ、冷麺を放っておくのも残念です。そこで私は「スープを飲まないならスープを減らせばよい」と考えました。冷やし中華のように少量のスープで麺を絡めて、好みで合わせる酢やからしの代わりに辛口酢ダレを添えれば、革新的な冷麺を演出できます。冷麺の大革命を自負する逸品です。この銀盤(皿)は叙々苑の特注品ですが、類似形状の陶器かガラス皿を使ってもよいでしょう。
●店舗情報
「叙々苑」
経営:(株)叙々苑
本社所在地:東京都港区六本木6-1-24ラピロス六本木5階
店舗数=直営店69店舗(首都圏50、札幌1、仙台1、新潟1、金沢1、名古屋3、京都2、大阪3、兵庫1、広島2、博多1、熊本1、沖縄2)2022年4月現在
【焼肉新聞 第46号 2022年8月20日発行 01面】
発行:事業協同組合 全国焼肉協会
東京都中央区日本橋茅場町2丁目5-6 日本橋大江戸ビル4階
TEL 03(3669)8929
http://www.yakiniku.or.jp/
編集:(株)日本食糧新聞社
広告:(株)横浜エージェンシー&コミュニケーションズ
展示会:(株)エヌイーオー企画
【写真説明】
写真1:調理のポイントはスープをよく麺に絡ませて盛り付けること。「銀盤=銀皿」は、この冷麺のためだけに製造した特注のステンレス製。具材は牛肉、冷麺専用カクテキ、ゆで卵、リンゴ、メロン、キュウリなど。酢やからしを希望する声もあるので、辛口酢ダレとセットで提供し始めている。