百歳への招待「長寿の源」食材を追う:地楡(ヂユ)

2002.09.10 85号 11面

地楡(ヂユ=ワレモコウ)の歴史は古く、産地はほぼ全国的。薬効も高く吐血・止血ほか幅広く庶民には伝統ある薬材として知られている。沙棘(サージ)は漢方薬材としては新しく、中薬大辞典に記載はない。チベット・モンゴルで中草薬として用いられていた。20世紀に入って驚異の薬効が知られブームに。この両薬、21世紀に活躍が期待される。(食品評論家・太木光一)

中国では「地楡(ヂユ)」と呼んでいるが、日本では「吾木香・吾亦紅」と書きワレモコウと呼ぶ。バラ科ワレモコウ属の多年草である。

この植物の歴史は古く紫式部の『源氏物語』匂宮の巻に「ものげなきわれもこう」と記されている。中国では『神農本草経』に収載され、「葉が楡(ニレ)に似て長く、初生のものは地にはい広がるので地楡と名付けられた」とある。

野山の日当たりのよい草地にみられ、草木は一~一・二メートルほどの宿根草で、夏から秋頃、上方に枝を分けて楕円形の花穂をたて、花は暗赤色小型。秋の七草とよく間違われる。山野や川原の土手にもよくみられた。花は小さく目立たない。ある人が主人の頼みのワレモコウを取り忘れた。吾れも紅なりの不満の声がきこえたので急ぎ取り集めたという話もみられ、花はバラ科とも思えないほど変わった形をしている。

利用法は広く、花茎を生かして生け花の材料に。風情が楽しまれる。花も乾燥して布袋に入れ薬湯として楽しめる。タンニンやサポニンの相乗で湿疹・痔疾・擦り傷・やけど・かぶれによく効く。よく温まると疲労を治し、血液循環・運動機能の高進作用もみられる。まさに健康湯といえよう。

若葉はゆでて水にとり、苦味をとってから油炒めにすると美味。サッパリとしている。

地楡の薬味と薬性は苦にして微寒である。この薬能をみると、止血と消化に効能がみられる。また薬理作用をみると、地楡のエタノールエキスは試験管内において大腸菌・枯草菌・ブドウ状菌・緑膿菌などのグラム陰性菌に対し抑制作用がみられる。

地楡は薬効が高いため、利用するには漢方医の指導をうけてからがよいと思われる。一般的には下痢に特効があるほか、吐血・出血性体質・子宮出血・痔疾などの止血に使用される。また痰切り、煎じ汁で傷口やはれ物などを洗ったりする。民間療法では赤痢やチフスなどに効くとして利用される場合もあるが、伝染病は専門医の指導を受けるほうが大切である。

中薬大辞典には数ページを割いて詳述しているが、効用主治として凉血・止血・清腸・解毒・治吐血・血痢・痔漏・湿疹・やけどほかをあげている。特異な効能を持つ薬剤と呼べよう。また次のような臨床効果がみられる。

(1)治療火傷…地楡を粉末にして塗る(2)治療皮膚病…地楡を粉末にして薬膏と混ぜ外部患部に塗る(3)治療結核性膿性…地楡の精製液を注射する

まことに特異、そして貴重な薬材といえよう。

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