4億年前から生き延びてきた長寿生物、サメ肉のパワー
不思議な機能を持つ生物、サメの肉を魚肉として食した場合、どんな栄養素が得られるかを示したのが2面のA表・B表だ。
A表の「鮫フィレ」及びB表の「吉切鮫」は、宮城県・気仙沼港に水揚げされた吉切鮫を、鮮度の良い状態で皮及び軟骨を除去し、生肉にしたもの。コラーゲンの代名詞である手羽先・豚足などに比べると数値は少ないものの、きちんとその効果は期待できる。コラーゲンは一日三~五グラム摂取することが望ましいとされているので、半分はこれでラクラククリアできるわけだ。さらに注目すべき点は低カロリー・高タンパクで脂質が少ないこと。手羽先・軟骨などコラーゲンの豊富な食品は大抵脂質が多いため、たくさん食べるには問題も出てくるが、サメ肉はほとんどゼロに近い数字だ。
気になるのは「どんな味がするのか」だが、淡白でほとんど特徴的な味はない。触感は軟らかく、普通の白身魚と変わらない。
もうひとつ気になるのは、「特有の臭いがするのではないか」ということだが、現在販売されている加工食品は、脱臭処理をしているものが多く、まったく気にならない。ところで、どうしてサメ肉は特有のアンモニア臭がするのかというと、これは体内の尿素が解体後分解されることで起こる。サメは、尿素含有率が高いので海水との浸透圧がない。だから他の魚と違って、水の出入りが不要なので膀胱らしきものは見あたらない。この身体の構造も大いに「サメのフシギ」だ。
◆昔は普通に食べていた! 肉まで食べてこそクレバーなヘルシーグルメ
いまでこそ「サメ」を食べるというと特別な感じがするが、昔は貴重なタンパク源としてどこの地方でも珍重されていた。大昔の話では「因幡の白ウサギ」に出てくるたくさんの「ワニ」は、実はサメのこと。弊紙8月号にご登場いただいた100歳の畠山ヤスさん(宮城県)も、子供の頃の田植えの手伝いの時、「サメの串焼き」をご馳走としておいしく食べたという。戦後の物のない時代に東京近郊でも、「バケツで買ってきて煮て食べた」記憶のある人も多い。
現代では「私は食べたことがない」と思っている人が多いだろう。実はカマボコなどのすり身の原料となっており、間接的にはみんな食しているはず。とはいっても、それだけでは収穫した全量を消費できていないのが現状。日本の水産業界ではそんなことはないが、世界の環太平洋の漁場などではフカヒレだけ取って投機の材料としている業者もおり、環境派のグループからそうした行為が「美食追求の残酷な活動だ」という声も上がっている。
『百歳元気新聞』ではこれまで、世界の長寿地域や健康食文化のある地域を取材してきた。沖縄の豚、エクアドル・ビルカンバのクイ、アメリカンインディアンのマトン、フランスや中国の肉文化‐など、それらは大抵「動物を1頭殺生したら工夫して丸ごと食べる」ことを課していた。結局はそれが私たち人間の身体を効率的に健康に保つ“理にかなった”方法となっている。おいしくて身体にいいフカヒレ食文化を守るためにも、サメの魚肉を積極的に食べ、地球規模の視野のクレバーなヘルシーグルメを自認しよう!
◆コラーゲンたっぷり「北京式フカヒレ肉の甘酢」
・フカ肉のフリッター8切れ
・ヤングコーン5本
・タマネギ1/3個
・ピーマン1/3個
・プチトマト4個
・食用油適量
・片栗粉適量・ゴマ油適量
・調味料
酢300グラム
氷砂糖200グラム
ケチャップ300グラム
AIソース20グラム
リーペリンソース(なければウスターソース)20グラム
塩少々
レモン果汁300グラム
水30グラム
梅肉少々
サンザシ少々
<作り方>
(1)フカ肉のフリッターは180度の油で1分間揚げる。
(2)他の食材も一気に加え、油切りをする。
(3)鍋に氷砂糖・サンザシを入れ軽く沸騰させる。残りの調味料も加え、溶けるまでかき混ぜ、火を止めた後、酢を入れタレを作る。
(4)(3)に油切りした食材を入れ、再び軽く煮る。
(5)最後に片栗粉でとじ、香りのいいゴマ油で仕上げる。
サメ肉は、どんな味にも仕立てやすい。東京ドームホテルの『ララチャイナ』では、「コラーゲンたっぷりのフカ肉のフリッター」の効能を前面に出し、季節にあったメニューを提案している。11~12月のランチビュッフェでは、「北京式フカヒレ肉の甘酢」が登場。「素材が淡白なので、インパクトのある味に仕上げました。サンザシは中華食材の乾物を使っていますが、家庭ではイチジクや柑橘類で代用してもいいでしょう」(糸田光博シェフ)。
◆そしてやっぱり美味なるフカヒレ
ここまで研究してきて「フカヒレ」だけを珍重するのでは、これからの時代の正しいヘルシーグルメにはなりがたい理由が、お分かりいただけたのではないだろうか。サメ肉を理解し食すあなたはもう大丈夫。胸を張ってフカヒレも召し上がっていただきたい。そのおいしさはもちろん、C表の通りコラーゲンに富み、脂質・コレステロール値は極めて低い。ムコ多糖類も非常に豊富だ。
弊紙7月号の柔道の田村亮子さんがインタビューで「母にフカヒレのスープを作ってもらっています」と答えている通り、靱帯などを傷めたスポーツ選手がケガの回復を早める治療食として摂取する例もある。