百歳への招待「長寿の源」食材を追う:どじょう

2003.05.10 93号 11面

ムール貝とどじょうはともに美味な水産物。前者はフランスで、後者は中国で味が良く料理面でも大活躍。ともに薬効(食効)面でも評価が高い。ムール貝は補肝腎に、どじょうは益気補中の効果大で、スタミナづくりに愛用者が多い。食べ方も幅広くファンの多い食べ物といえよう。しかし、どじょうの産出額は減少中で中国産が流通。ムール貝も輸入品時代になるものと思われる。

(食品評論家・太木光一)

どじょうは漢字で「泥鰌」と書く。中国語では「泥鰍」と書き「ニイ・クイ」と読む。ドジョウ科でコイ科の魚と近縁、コイ亜目に含まれている。

どじょう類は日本で十数種みられ、全長一八~二〇センチ程度。中国では一〇〇種近くみられ、中には長さ五〇~六〇センチ、重さ三キロの大物もみられる。形は円筒状で細長く、褐色ないし緑褐色、尾びれと背びれには淡墨色の斑紋がある。側線は不完全で、うろこは細かく皮膚の中に埋もれている。

日本の全土、朝鮮半島全域・台湾・中国・インドなどに分布する。湖・沼・溝・川・水田などにすむ。冬の間や乾期には泥の中にもぐって冬眠する。春になると水田にあがり夏季の産卵に備え、えさをよく食べ活動する。生態の特徴として、えら呼吸はもちろん、水中の酸素が少ない時は盛んに腸呼吸し、肛門から水泡を出す。

日本のどじょうは古い時代から食用とされ、海から遠い地域の動物性タンパク質の補給源として貴重視されてきた。旬は夏。脂ものって卵をたくさん持ち、しかも骨は柔らかく絶品だ。韓国ではより脂ののった秋どじょうを賞味する。中国では立夏前後が最も肥えて美味とする。産卵後はやせてまずくなる。

どじょうの成分は水煮の状態で一〇〇グラム当たり七六キロカロリー、水分八一・一%、タンパク質一四・〇%、脂質一・六%、糖質〇・四%、灰分二・九%。無機質ではカルシウム七七〇ミリグラム、リン五二〇ミリグラム、鉄四・〇ミリグラムほか。ビタミンではA効力四九〇国際単位、B1〇・一ミリグラム、B2〇・〇六ミリグラムほか。

丸ごと食べると、日本人に不足がちのカルシウムの供給源となる。そのほかビタミンA・B1・B2も多い。タンパク質も鶏肉並みでスタミナ食としても優れている。特に老人にはカルシウムの供給源として愛用をお勧めしたい。

どじょう料理はかば焼き・どじょう汁・丸煮・柳川鍋・天ぷらなどに、好きな人はうどんのつゆのだしにも利用する。どじょう汁は一番手軽な食べ方。丸煮も簡単で味をつける前に酒で生臭みを殺すこと。ポピュラーなのは柳川鍋で名産地柳川から広まったもの。開いてサッと熱湯を通して水にとり、みりん、醤油で下煮し、ささがきごぼうを敷いた鍋に入れ、煮立ったところでとき卵を入れる。ウナギよりサッパリして軽く多くのファンがいる。

中国で泥鰍は西部の高原地区を除いて各地でとれ、優れた栄養食品とみている。薬効にも優れ益気補中・去湿邪・治消渇・陰萎・伝染性肝炎・痔疾・疥癬など非常に幅広い効用がみられる。全国的に愛用者も多く、特に伝染性肝炎には卓効が期待される。

薬膳の食法として泥鰍荷叶湯(蓮の葉とスープ状に)・泥鰍豆腐・泥鰍湯・煎泥鰍などに利用され美味で安価、庶民に広く愛されている。

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