ヘルシートーク:女優・鈴木京香さん

2026.10.01 375号 05面
映画『キリコのタクト~YELL~』 10月2日(金)より全国ロードショー (C)映画「キリコのタクト~YELL~」 製作委員会

映画『キリコのタクト~YELL~』 10月2日(金)より全国ロードショー (C)映画「キリコのタクト~YELL~」 製作委員会

(C)映画「キリコのタクト~YELL~」 製作委員会

(C)映画「キリコのタクト~YELL~」 製作委員会

◇「正直でいること」を大切に演じた 生徒を思い、本音で向き合うキリコ先生

卒業ソングの金字塔として愛され続けてきた、いきものがかりの名曲「YELL」をモチーフにした映画『キリコのタクト~YELL~』。伝説の音楽教師・原田貴理子を演じた鈴木京香さんに、作品への思いや見どころ、さらに最近ハマっている野菜にまつわる話も伺いました。

●一生懸命練習した指揮 本番は楽しくて気持ちよかった

この作品は、伝説の音楽教師・原田貴理子(通称:キリコ)と、その教え子たちの愛と絆を描いた物語です。私が演じたキリコ先生は、生徒の心の中に土足でズカズカと踏み込みながらも、実はとても愛情深い熱血教師。初対面でも一切物おじせず、表裏のない性格で、自信を持っているんですよね。

でも私自身は、女優という仕事をしながらも引っ込み思案で、遠慮しがちなタイプ。キリコ先生とは全く共通点がなかったので、どんなふうに演じればいいんだろうと悩みましたね。

一風変わった先生だと印象づけるには、まず外見づくりだと思って、前髪を短く切り、あえて時代遅れのような衣装を身につけました。そんな中で思い出したのが、知人の女性。彼女を紹介すると、誰もが個性的だと口にして驚くんですけど、心が温かくて優しい人だから、最後にはみんな大好きになるんです。キリコ先生のキャラクターは、まさに彼女だと思い、知人をモデルにしたことで、リアリティを持って演じることができました。

撮影前の準備でとにかく大変だったのは、ピアノと指揮です。ピアノは全く弾けなかったので、随分前から教えていただいたのですが、それでも撮影前の不安は大きかったですね。

元々音楽が苦手なので、指揮も難しかったです。本来は、歌より一呼吸先に指揮を振って、引っ張っていかなければいけないのに、いつのまにか歌と指揮が合ってしまって(苦笑)。生徒たちも戸惑っているのが分かるから「面目ない!」と思いながらも、練習は楽しかったですね。一生懸命練習をして臨んだ本番で、生徒たちの表情を見ながら指揮を振っている瞬間は、本当に楽しくて気持ちよく、何より「音楽って素晴らしい」と感激しました。

●台本に書かれていなくても空を見上げるように

「私は希望を教えています」–キリコ先生が同僚の先生に言った、私が一番好きな台詞です。キリコ先生は、そういう心づもりや教師としての高い志を持っていながらも、生徒たちと向き合う時は一切出さず、楽しみながら、彼らにとって一番いい方法で導きたいと思っているんですよね。生徒たちに自分の教育方針を伝えたい時があったとしても、決して常識的な言葉は選ばず、自分の気持ちをありのまま伝えるような先生だなと。

何よりキリコ先生の素敵なところは、いつも生徒たちと本音で向き合い、大人と同じように接すること。だから、彼らもだんだんと心を開いていき、最終的に恩師と言ってもらえる先生になりえたんだと思います。そんなキリコ先生に近づくには「正直でいること」だと思い、つねに意識して演じていました。

キリコ先生は関西弁なのですが、正確な方言よりも大事なのは、キリコ先生の思いで話すことだと思っていたんです。だから、もしかするとまくし立てる関西弁が間違っているかもしれないですね(苦笑)。

学生時代を振り返ると、キリコ先生のような方はいなかったのですが、幼稚園の頃から高校生までの間、必ず大好きな担任の先生がいたんですよね。1人に絞れないほど素敵な先生ばかりで、改めていつもラッキーなクラス替えを経験していたんだなと思います。

作品の中で何度か登場するのが、キリコ先生が空を見上げているシーン。「つらい時は、空を見る」という台詞を大切にしたくて、台本に書かれていなくても、空を見上げることを心がけていたんです。そんな私の思いを監督がくみ取って、そのシーンをいくつか使ってくれて。うれしかったですね。

●自分でも驚くほどトマトにハマっています!

「雨の音が好き。音楽に聴こえて」と生徒が言い、キリコ先生は「雨はうるさいなぁ。音楽に聴こえて」と言うシーンがあります。私は絶対音感がないタイプなので、雨は大好き(笑)。音楽が流れていたり、話し声が聞こえる中でも、台詞覚えや本を読むことができるので、自然の物音に対して、嫌いだと思うことはないんですよね。50歳を迎える前に何か新しいことを始めたいと思い、俳優仲間と相談して、音楽をやろうと決めたんです。

私は作曲はできないけれど詞は書いてみたいと思い、曲をいただいてから作詞をしています。メロディーに合う言葉を探して、一つの世界をつくるのが楽しくて、いまも続けています。

映画の撮影をしていたのは、昨年の夏頃。とくに、森林に囲まれた広大な公園で撮影した合唱シーンは、思い出に残っています。とても暑い中、生徒たちが懸命に歌ってくれて。そんな彼らの頑張りが実り、美しい景色が広がる感動的なシーンになっています。

暑い日の撮影が多かったこともあり、忘れられないのがロケ先でいただいた梨。大玉なのに甘みがありジューシーで、本当においしかったですね。

毎日の生活の中で、野菜は切り離せないものですし、できるだけ多くとるように心がけています。いまハマっているのは、トマト。差し入れの中に、ジュエリーのようにきれいに並んだ糖度の高いプチトマトがあったのですが、よく食べていたみたいです(笑)。スタッフの方にも「京香さんが、こんなにトマトを好きだとは知らなかったので、次もトマトにします」って言われたほど。自分でも「トマトがこれほど好きだったとは!」と思うくらい、最近、よく食べています。

●プロフィル

すずき・きょうか 1968年5月31日生まれ、宮城県出身。1989年森田芳光監督作『愛と平成の色男』で女優デビューし、NHK連続テレビ小説『君の名は』(91)でヒロイン役に抜擢。映画『119』(94)で日本アカデミー賞優秀助演女優賞、『血と骨』(04)では日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝く。その後も『清須会議』(13)、『グランメゾン・パリ』(24)など多数の注目作品に出演。

◇映画『キリコのタクト~YELL~』 10月2日(金)より全国ロードショー

Story 音楽出版社に勤める北村翔は、特集企画「伝説の音楽教師」の取材を任されることになった。取り上げる教師は、全国合唱コンクールで数々の賞を獲得し、「優勝請負人」とまで呼ばれた、翔の恩師キリコ。しかし彼女は退職して消息不明に。翔は当時の合唱仲間と再会し、一緒にキリコを捜し始める。次第に明かされていく、教師の素顔と生徒たちに隠されていた真実とは–。

[主演]鈴木京香

[出演]藤原大祐、井頭愛海、田辺桃子、西垣匠

[監督・脚本・原作]雑賀俊朗

[配給]KeyHolder Pictures

(C)映画「キリコのタクト~YELL~」製作委員会

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