新型コロナ感染防止で巣ごもり消費拡大 在宅勤務・休校など増加

総合 ニュース 2020.03.02 12020号 01面

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために大手企業を中心に在宅勤務が増加し、27日には、安倍晋三首相が全国すべての小中学校について、3月2日から春休みに入るまでの臨時休校を要請したことで、「家庭の食」に対する備えに関心が高まっている。厚生労働省が公表した新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の中で、感染拡大防止策の一つとして、広く外出自粛を求めることが明記されたことから、買い物の回数の減少、ネット購買や外食から出前などへの移行が加速し、いわゆる巣ごもり消費が拡大することが予想される。

すでに消費者が食の分野で、不特定多数との接触を敬遠する動きが顕在化している。日本最大級の宅配デリバリーの出前館が、2月7日に公表した20年1月のオーダー数は、前年同月比7%増の271万件、アクティブユーザー数(直近1年間で1回以上注文したユーザー数)は、同13%増の317万人と増加しており、2月の数値もうるう年を考慮しても前年同月を超えることが予想される。

「巣ごもり消費」については、一部食品メーカーでは7月の東京2020大会開催を見込み、「巣ごもり消費(自宅観戦)」への対応として、平年よりも生産計画を上乗せしている。新型コロナ感染のピークとの差をどのように埋めるかが課題となる。さらに、あるメーカー担当者は新型コロナ感染拡大は深刻な問題とした上で、「感染拡大という非常事態と現状で健康上に問題がなく自宅にいる状況」の意識の乖離(かいり)を指摘し「今回の巣ごもり消費は、非常食という視点だけではニーズをとらえきれない。誤解を恐れず言えば食を楽しむ視点が重要」と分析し、簡便性、保存性に優れるカテゴリーの食品の中でも、プレミアム系の商品の需要が高まると予測する。

「備え」の部分で参考になるデータは、19年10月12日夜から13日未明にかけて東日本を通過し、関東、甲信越、東北地方に記録的な大雨や河川の氾濫による浸水被害をもたらした台風19号の時に消費者がどのような加工食品を購入したかだ。KSP-POSデータを基に、記録的な災害に備え、消費者がどのような加工食品を購入したかを調査した結果、首都圏の前年同期販売数量増加率が最も高かったのは、「育児用ミルク」で(390.9%)、次いで「畜産缶詰」(269.3%)、「水産加工品」「水産缶詰」「水」「調理済みカレー」「カップ麺」「米飯加工品」の順となった。ただし、台風など自然災害への備えが数日間と日単位であるのに対し、今回の新型コロナで週単位の備えとなること、台風では物理的に買い物が困難になるのに比べ今回は、買い物という行動に対する物理的な制約はないこと、さらには、自然災害では物流に大きな影響が出るが、現状では物流に問題はない。(青柳英明)

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