FABEX2022:「モンディアル・デュ・パン」優勝チーム谷口佳典氏とコーチの安倍竜三氏講演

谷口佳典氏(左)、安倍竜三氏

谷口佳典氏(左)、安倍竜三氏

 ●「健康と栄養」に関する知見を自分ので表現

 世界最高峰の製パンコンクール「第8回モンディアル・デュ・パン」で優勝した日本チームのブーランジェリー・フリアンド谷口佳典シェフとチームのコーチを務めたブーランジェリーパリゴ安倍竜三シェフは、4月13日の「デザート・スイーツ&ベーカリー展」のセミナーで『モンディアル・デュ・パン優勝2連覇に輝いた日本チームが語る「健康への付加価値、これからの製パンとは」』と題して講演を行った。谷口氏は、大会を通して得た「健康と栄養」に関する知見を取り入れて自分なりのパンとして表現することが重要」と述べた。安倍氏は「食べる人に負荷がかからないパンを提供できるのは作り手のパン職人だけ」である「健康と栄養」という視点は今後のパン作りに重要なファクターになるとの認識を示した。

 「モンディアル・デュ・パン」は、フランスの国家最優秀職人章(MOF)を持つ職人数名が、健康的で栄養価が高いパンの開発と若手パン職人の育成、さらには、国際的な技術交流を目的として開催されるコンテストと説明。同大会は2年に一度開催され、選手(25歳以上)とアシスタント(22歳以下)に、コーチ1人を加えた3人の代表チーム単位で出場する。日本は第1回から参加しており、第3回大会から運営母体が設立された。7回大会で大澤秀一など日本代表チームが優勝、8回大会では谷口氏、安部氏、アシスタントのパン工房フルニエの北峯昌奈氏で編成されたチームが優勝し2連覇を果たした。

 谷口氏は、同大会の特徴でもある「健康と栄養」パンのレシピ開発について、第8回大会からルールが小麦粉使用不可に変更となったことから、「これまでの大会出場を通して蓄積した経験、知見が生かすことができず大変だった」としながらも、「私自身、コンクールを通して日本をアピールすることを考えていたこともあり、日本のコメを素材にしたパンを開発した」と述べた。さらに、素材に関するエビデンスなどを記載するレポートの提出求められていることから、日本チームも栄養士がバックアップしている。

 安倍氏は「健康と栄養」を掲げる大会の側面について、フランスの大会本部では、世界各国から参加するチームが、持ち込んでくるその国のスーパーフードと呼ばれる食材をフランスの国立穀物研究所と連携し、素材の機能、作用を研究してパンに活用できるかを検討していることを説明した上で、日本農研機構のサポートを得て、新たな機能素材探しを強化している現状を明らかにした。大会は製パン技術を競う場であると同時に、参加国が持ち込んだ素材に関する情報を共有する場としても機能しているようだ。

 22年、「ベストオブモンディアル・デュ・パン」という世界大会を日本で開催する。19年、21年大会の上位チームを日本に招待する。安倍氏は、大会は戦う選手が輝く場所であると同時に機械メーカー、食品メーカーが世界に卓越した技術をアピールできる場でもあるとして積極的な関与を呼び掛けた。

 (青柳英明)

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