湯浅醤油、「海中熟成醤油」を発売 塩角無く深みある味

海底で約半年間熟成した「海中熟成醤油」は貝殻も付いたまま販売

海底で約半年間熟成した「海中熟成醤油」は貝殻も付いたまま販売

 【関西】湯浅醤油が海底で約半年間熟成した醤油を「海中熟成醤油」として4月から限定300本を販売している。農薬や肥料を一切使わない、自然栽培の大豆と小麦とコメを使った本醸造醤油を温度変化や紫外線が少ない海中で半年間熟成させた。海底から引き揚げた瓶に張り付いた貝もそのままで、日本初の「海中熟成醤油」として同社直営店では200ml瓶・税込み4860円で販売し、湯浅町ふるさと納税の返礼品にもなっている。

 これは2021年9月に和歌山県串本町で行われた「トルコ軍艦エルトゥールル号追悼式典」で鎮魂のため、地酒と一緒に湯浅醤油を海に沈めたことがきっかけ。約1年後に醤油を引き揚げると塩角のないまろやかな味わいに熟成したことから、第2弾として今回は販売に向けた海中熟成醤油の開発に挑んだ。22年秋に瓶のキャップを赤い蝋(ろう)で密封した醤油を湯浅湾の海底15mの位置に沈め、23年3月に海から引き揚げた。地上に比べて温度変化や紫外線が少ない海中で、自然発生する海の「ゆらぎ」で瓶を動かして熟成を促進。沈めた時のフレッシュ感とおいしさを保ちながら、低温で長期熟成したような塩角が無く、深みのある熟成に仕上がった。

 発売後2週間の状況はふるさと納税での注文に加え、噂を聞きつけた外国人などの観光客が直営店で購入している。

 同社では「海中熟成醤油を通じて、ものづくりの面白さを一人でも多くの人に伝え、伝統と技術を引き継ぐ若い作り手を増やしたい」と明治時代から続く醤油本来の製法と醤油発祥の地で140年続く伝統を守りながら、時代のニーズに合わせた醤油の新たな可能性を追求している。(深瀬雅代)

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