総合小売2強=“自前”“他力” 構造改革で岐路 鍵握る変化対応の路線

小売 ニュース 2019.10.18 11957号 03面

総合小売2強のイオンとセブン&アイ・ホールディングスのスーパー事業構造改革が岐路に立たされている。社会の急激なデジタル化などに伴って変化する生活者の嗜好(しこう)やライフスタイルに対応する売場づくり、商品開発の総合力発揮へ、イオンは専門店化や食のSPA(製造小売)化を主導するため、総合スーパー(GMS)事業会社や食品スーパー(SM)事業会社を再編する“自前”路線を進む。セブン&アイはGMS事業会社のイトーヨーカ堂を、成長分野の食品と不採算のライフスタイル事業(衣料、服飾・雑貨、住居関連)に分割し、グループ企業や外部企業との連携を模索する“他力”路線への転換を選んだ。

イオンはGMS事業会社とSM事業会社の再編を地域統合の形で進めている。SM事業会社では、長期的な成長が可能な体制として今期の構築を目指している。マージンアップとコストダウンによる持続性、IT(情報技術)の活用による効率化、新たなパートナーシップと新業態への転換からなる市場創造の三つの分野でのシナジーの創出がポイントになる。

イオンの岡田元也社長は「変われなくなったら、終わりだというだけのことだと思う。直近のところ、大きな変化に対してイオンは十分に変われているのかというと、それはかなり遅れていると考えている。ここでもう1回、大きく変わって、変化を全部取り込んで次の50年を目指していきたい」と9日の上期決算会見でコメントした。

同席した藤田元宏副社長SM事業担当(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス社長)は「統合によって得た大きな地域シェアを活用して、商品の企画、創造から販売までのサプライチェーンを再構築するとともに、地域のお客さまに今までにない新しい買い物体験をしていただける業態を開発していきたい」とした。

セブン&アイは、イトーヨーカ堂の構造改革はレイアウト変更、商品構成の見直しだけでは安定収益化へのスピードが遅いとして、22年度までに不採算店舗の外部連携または閉店、ライフスタイル事業のさらなる大幅な縮減と自主MD(商品施策)からの大幅な撤退のそれぞれの検討、今回分社化の方針を示した食品特化型店舗イトーヨーカドー食品館22店とグループ企業との連携による収益性改善を10日の上期決算会見で打ち出した。それによって22年度末に1700人の雇用の移転に着手、年齢別要員構成のゆがみを是正するという。

井阪隆一社長はイトーヨーカドー食品館22店の分社化について「グループの成長戦略でもある首都圏の食品戦略を推進すべく収益性の高いビジネスモデルに転換を図っていきたい」と同会見で発言した。その上で首都圏でイトーヨーカ堂の「イトーヨーカドー食品館」、ヨークマートの「ヨークマート」、シェルガーデンの「ザ・ガーデン自由が丘」、フォーキャストの「コンフォートマーケット」と四つのブランドで展開しているSMについて「あるべき商品構成、店舗フォーマットの検証を踏まえ、商品の供給プラットフォームの確立、システム、物流の統合、管理部門との効率化を図っていく。将来的にはイトーヨーカ堂の食品事業でヨークベニマルとの連携も視野に入れ、さらなる効率化を目指していく」とした。

衣料、住居の自主MDについては「やめるMD、個店で選択するMD、継続強化するMDをしっかり精査し、衣料、服飾・雑貨、住居関連については原則、テナントに変更していく」とし、「将来的にはライフスタイル事業部の売場については現状の半分にまで縮減することを考えている」とした。(川崎博之)

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