新型コロナ影響:味の素社、影響試算 3ヵ月最大6.5億円のコスト増

調味 ニュース 2020.02.21 12017号 01面

味の素社は、中国・武漢市で発生して日本を含む世界で感染者数の増加が報告されている新型コロナウイルス感染症について、流行が3ヵ月間継続した場合の事業への影響を19日までに試算した。それによると中国の現地工場が停止した場合の固定費増が最大6億円、滞る中国からの原料輸入の代替費用で同3億円と合計9億円のコスト増となる一方、中国の経済活動停滞に伴う原油の値下がりなどで原燃料費で最大2億5000万円のコスト減になる。それらを合わせると3ヵ月で最大6億5000万円のコスト増になるという。

19日の2020-2025年度中期経営計画説明会で明らかにした。この試算には、新型コロナウイルス感染症の流行が長引いた場合に最も大きいとみている素材事業やMSG(グルタミン酸ナトリウム)の市場への影響、同社が事業展開している日本と主要国での景気の影響は含まれていない。それらの影響について、西井孝明社長は「MSGや動物栄養のコモディティー事業については、中国企業はグローバルマーケットで私どものコンペディターになっているので、中国企業の生産がどこまで滞るかによって、ポジティブ、ネガティブさまざまな要素が出てくるだろう」とした。ただ、「工場停止による固定費増、中国からの原料輸入代替、燃料費、これらはいずれも金額としては業績の水準からは小さいので、今期の決算への影響は軽微」という。

今回の試算で、影響を受けるとした中国の現地工場は、海外向けの医薬用アミノ酸生成会社である上海味の素アミノ酸社と北米、日本へ冷凍食品を輸出する上海味の素調味料社。2月の1ヵ月間、操業を停止すれば、収益は上げられなくても上海味の素アミノ酸社で1ヵ月当たり8000万円、上海味の素調味料社で同1億2000万円の固定費は負担しなければならないため、1ヵ月当たり2億円のコスト増となり、3ヵ月間続けば最大で6億円になる。滞っている中国からの輸入原料は、日本向けの冷凍食品や加工食品の野菜原料、水産物原料のほか、一部の調味料、香辛料。原燃料費については、MSGの原料となるタピオカの値下がり、原油の値下がりにより国内で2000万円、海外で2億3000万円のコスト削減効果が見込めるという。

新型コロナウイルス感染症に対してのリスクマネジメントは、栃尾雅也代表取締役専務執行役員グローバルコーポレート本部長兼コーポレートサービス本部長を本部長とする体制で臨んでいる。19日の2020-2025年度中期経営計画説明会では、予定していた質疑応答後の45分間の懇親会の中止を17日に決定し、当日の会場への入場に当たっては、体温37.5度C以上の発熱を確認した場合に入場を制限する前提での検温の実施、マスク着用、入場前の手の消毒への協力を呼び掛けた。=関連記事2面

(川崎博之)

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