タイ、ペットフード市場が急拡大

総合 ニュース 2023.08.23 12630号 07面
水産最大手タイ・ユニオン・グループ傘下iテール社は世界市場を狙う=同社販促資料から

水産最大手タイ・ユニオン・グループ傘下iテール社は世界市場を狙う=同社販促資料から

 タイのペットフード市場が急拡大している。商務省商業開発局によると、2022年約450億バーツ(約1890億円)。コロナ禍前から30%以上も増えている。今後も高い伸び率で拡大していくとみられ、25年には630億~650億バーツとなって世界1位に踊り出す見込みだ。企業の生産拡大や投資も進んでいる。

 タイペットフード貿易協会によると、タイで飼われている猫や犬などのペットの数は22年末時点で1500万頭強。10年前と比べて1.5倍以上に増加している。これに伴いペットフード市場も拡大しており、18年に300億バーツにすぎなかった市場はこのところ年平均10%前後の割合で増加。28年には850億バーツ近くに達すると予想されている。

 背後にあるのがコロナ禍で広がった巣ごもり生活と、少子高齢化が進んで子どもの代わりにペットを飼う人が増えるようになったこと、さらには所得の向上で社会的ステータスが高まっていることが挙げられる。いったんペットを飼い始めると、飼育はその死まで続くことから、ペットフードなどの高い需要は最低でも15年程度は続くとされている。

 こうした状況に企業の動きも活発だ。水産最大手タイ・ユニオン・グループ傘下のiテールは22年12月の株式上場で約192億バーツを調達。タイ証券取引所のメーンボードで過去2番目となる規模だった。得られた資金で新たに二つの工場の生産能力拡大を進める。また、同じ時期にオランダと中国に現地生産のための新会社を相次いで設立。世界市場も狙う。

 食品世界最大手のネスレ(スイス)のタイ法人も50億バーツを投じて、東部ラヨーン県のアマタシティ・ラヨーン工業団地にウエットタイプのキャットフード生産工場を新設。日本を含むアジア各国などに輸出を進めていく考えだ。

 米系のマース・タイランドは、1000万米ドル(約14億円)を投じて東部チョンブリー県のアマタシティ・チョンブリー工業団地にアジア太平洋地域では最大規模となるペットフードの研究開発(R&D)施設のペットセンターを開設した。同社の施設としては世界5ヵ所目。これによってタイ工場独自の製品開発ができるようになり、ニーズに応じた生産が進む。猫や犬を常時100頭以上飼育して、需要に合った新製品を供給。世界30ヵ国以上にも輸出していく方針だ。

 企業各社の意欲的な生産活動に支えられて、早ければ2年後にもタイにおけるペットフード生産は世界1位となる見通しだ。22年時点でのペットフードの輸出割合は、1位がドイツの12.6%、2位が米国の9.9%、3位がタイで9.7%。輸出でも世界首位を狙う。(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)

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