ビール市場、家飲みからビール復権 減税後初の春夏へ正念場
大手メーカーが家庭用ビールの価値提案に懸命だ。開栓するだけで飲食店に近い生ビールが味わえる新商品から、自宅に居ながらの工場見学まで。外出自粛で日常化して久しい家飲み生活を充実させる提案が目立つ。業界念願のビール減税を経て迎える初の春夏シーズン。再度の緊急事態宣言に業務用での活動が思うに任せぬ中、メーカーが家庭用市場の活性化にかける思いは強い。家飲みからビール復権の風を起こせるか正念場だ。(丸山正和)
商品面で今シーズンを沸かせそうなのが、アサヒビールが主力ブランド「スーパードライ」から新たに提案する「同 生ジョッキ缶」。全開する蓋と特殊塗料による缶内部の加工により、きめ細かい泡や香りが自然にわき出る画期的な缶ビール商品だ。
飲食店の樽生ビール品質向上への支援を続ける同社だが、外食業態の困難な状況が続く。少しでも外飲みに近い味わいを自宅で体験してもらいたいと開発した。
一方、キリンビールが展開を加速するのが家庭用のレンタルサーバー「ホームタップ」。定額制でクラフトビールや季節限定ビールを工場から定期的に配送するサービス。こちらは多様なビールの味わいを自宅で楽しめるのが特徴で、簡単な仕組みと洗練されたデザインが好評を得ている。今年はいよいよ本格的な展開に向け、基盤整備を進めていく。
身近な嗜好(しこう)品のビールだからこその知的欲求に応える提案も豊富にある。キリンは先端技術「IoA仮想テレポーテーション」を活用した映像で、国産ホップ「イブキ」の畑や製造現場を体験できるサイトを、アサヒはVR(仮想現実)で工場を3D見学できる特設Webサイトを公開している。また、キリンはコロナ影響による参加者増に応えるかたちで、ビール関連セミナーの講座数を従来に比べ2倍の四つに拡充した。Zoom開催のため、遠隔地の人と一緒に受講し知識を深めることが可能だ。
この時期ならではの提案もある。アサヒはコロナ下での新たなコミュニケーション策として昨年来続けてきた「バーチャルバー」で、初となる満20歳限定オンラインイベントを2月13日に実施する。これまでに音楽フェスとのタイアップやハロウィーンでの開催で蓄積してきたノウハウを投入し、将来の消費層である新成人にビールを皆で楽しむ場を提供する。
14日に控えるバレンタインデーに向けては、キリンが運営するオンラインショップDRINXで専用のギフトボックスやスイーツに合うクラフトビールのセットをラインアップする。コロナ下で直接会えない人へのプレゼントとしても提案しており、同18日までキャンペーンを展開中だ。