イオン、PBの抜本的改革へ 大量消費モデルと決別
イオンの岡田元也社長は9日の決算説明会で、PB(自主企画品)の抜本的な改革に言及した。スケールメリットを武器とするだけでなく、現在は小さな規模だからこそ可能とされている地域性や健康志向の分野に踏み込んでいくという。「現状のトップバリュを換骨奪胎(かんこつだったい)し、まったく違うものに作り変える。そうでなければ大量生産・大量消費のNBと同じように見なされてしまう」(岡田社長)
岡田社長は、世界的にみてもNBの巨大ブランドほど消費者の変化に苦労していると指摘する。
「若い世代を中心に、大量消費型の社会で伸びてきたブランドへの評価が下がっていることは間違いない。この変化は、われわれがNBのシェアを奪うよう取り組むべきことを示している」(岡田社長)
一方、PB自体もNBと同様と評価されてしまえば見放されるという。今後は大量消費とは異なる価値観として、地域密着や健康価値を志向する。岡田社長が例に挙げたのは保存料を極力使用しない自然派ワインなどで、現状では生産規模が小さかったり、流通経路に制約があるような食品分野だ。
「フードロスという観点からは問題があるとしても、デパ地下などで支持されているのは日持ちがしない商品だったりする。われわれが目指すのは、ちまたにあふれる『身体にいい』とうたうような商品ではない。小さい規模で、ローカルでやっているようなものを取り込めないとしたら、トップバリュもNBと同じ理由で支持を失うだろう」(岡田社長)
変化する価値観への対応という点で、これから取り組もうとするPB改革は、進行中の食品スーパー(SM)や総合スーパー(GMS)の業態改革に通じるものがある。岡田社長は、SMもGMSも業態として消費者とのミスマッチが顕在化しているという。
業態改革は品揃えの変化にとどまらず、組織やインフラ構造の再編を必要とする。すでに地域ごとにグループ会社の再編・統合を進めているが、さらにイオンリテールの再編も視野に入れている。
岡田社長は、「どこまで地域主義・個別主義にするか、極端に言えばイオンリテールの組織構造はローカルチェーンと同じくらい小さくできないかと考えている。また、ネット専業の事業社のようにフラットな組織構造にして意思決定の権限を与えないと、旧来型のかっちりした組織では変化のスピードについていけないだろう」という。このような組織構造へのシフトは、前述の商品改革を進める上でも必要になる。(宮川耕平)