新型コロナにどう立ち向かう 米国外食産業の対応 業界全体で助け合い生き残りを
新型コロナウイルスの感染者数、死者数ともに世界一となった米国。必要不可欠でないとされる事業の停止措置のために、外食産業はデリバリーとテークアウトのみ営業可能となり、大きな影響を受けている。
以前からデリバリー中心であったピザ専門店などは、逆に売上げを伸ばすところもあったが、食事に伴う接遇体験全般を楽しむための高級店は、軒並み大打撃を受けた。
休業を余儀なくされた外食店の多くが保険会社に損失補填(ほてん)を請求したが、保険会社側は、補償するのは天災で生じた物的被害による営業停止の損失に限るとして、保険金支払いを拒否。そこで、ジャン・ジョルジュをはじめ、ウォルフガング・パック、ダニエル・ブールーなどの大物セレブシェフは、非営利団体「ビジネス・インタラプション・グループ」を設立。新型コロナウイルスによる損失補填を求めて、共同して保険会社に働きかけている。トランプ大統領は「契約にパンデミックが除外されていないなら、保険会社は補償すべきだ」としている。
チェーン店も、それぞれ方策を講じている。「マクドナルド」「バーガーキング」「KFC」「サブウエイ」など多くのファストフードチェーンは、ウーバーイーツやドアダッシュなどの第三者プラットホームを使っての配送手数料を期間限定で無料にした。また、「ワッフル・ハウス」は、オリジナルのワッフル・ミックスの販売を始めたところ、4時間で完売し、追加販売した。「シェイク・シャック」は、家庭でシェイク・シャックのバーガーを作って楽しめるよう、パティやポテトロール、チーズ、ソースの入った8人前のキット(49ドル)を「ゴールドベリー」という食のECサイトを通して販売している。
一方、普通なら客足が増えれば歓迎すべきなのだが、「タコベル」は、ドライブスルーを利用した客にタコスを1個無料で進呈するキャンペーンをしたところ、客が2倍に増えたことから、密集を避けるべきときに感染の危険が増加するという不満の声が従業員から上がった。
外食産業に従事する労働人口は、2019年において1530万人。売上げは8630億ドル、GDPの4%を占める。全米レストラン協会は4月20日、新型コロナウイルスの影響によって同産業で働く800万人がすでに失職したという調査結果と、3月の売上げは300億ドル、4月は500億ドル、年間2400億ドル減少する見通しを発表、連邦政府に具体的な支援策を提案した。
大打撃を受けた外食産業は、あらゆる手段を使って生き残りを図っている。今回のパンデミックでは、特定の店ではなく外食産業全体が打撃を受けているため、助け合って試練を乗り越えていこうとする勢いが感じられる。全米レストラン協会の始めた外食産業従事者救済基金には、個人や企業から2週間で1500万ドル(16億2000万円)余りの寄付金が寄せられている。(外海君子)