中央酪農会議、牛乳拡販キャンペーンを開始 消費減退に危機感
牛乳の消費減退に危機感を抱き、生産者自らが直接消費拡大に乗り出した。全国の牛乳の生産者団体、(社)中央酪農会議(東京都千代田区、03・3245・7621=中酪)は、牛乳消費拡大対策事業として「牛乳に相談だ。」キャンペーンを下旬から開始する。全国の酪農家から飲用向け生乳1キログラム当たり15銭を財源に国の補助も含め初年度10億円規模でスタート。今年度から5ヵ年計画で「牛乳消費安定・飲用需給構造改善事業」を展開する。
今回のキャンペーンを実施する背景には、牛乳の消費量が10年前をピークに緩やかに減少していることが挙げられる。特に昨年度は猛暑にもかかわらず前年割れ、今年度もその傾向が続いている。その要因として中酪では「家庭内の食事が減ったことや少子高齢化など市場の構造変化があること、他の健康飲料との競争の激化、酪農家数の減少によるビジネスチャンスの損失がある」(前田浩史事務局長)と分析。伊佐地誠専務理事は今回のキャンペーンについて「2万8000戸の酪農者の強い危機感と期待感で実施。どうこたえられるか責任と緊張感を持っている。牛乳離れが若い世代に顕著なことから、今回は中・高校生にターゲットを絞り、さまざまなツールで牛乳に興味を持ってもらう。手法がユニーク、斬新なのでリスクも感じるが意欲的なキャンペーンにまとめられた」と強調する。
キャンペーン内容は、中・高校生の持つ“まじめでおもしろくない”イメージの牛乳を“相談できる仲間”のような親しみのある存在へと変えていくため、キャッチコピーに「牛乳に相談だ。」を採用し、ロゴマークを作成。「従来の教科書的な啓発ではなく、中・高校生の目線に合わせたメッセージで、フレンドリーに語りかけることを目指した」(前田事務局長)と語る。
具体的には、中・高校生が夏休みの8月中と冬場の1~2月、首都圏中心にTVCMを集中放映。中・高校生の生活圏に屋外・交通広告を展開するほか、Web(www.gyunyu.com)、大手予備校の河合塾とのタイアップ、牛乳パック広告欄での訴求(タカナシ乳業、日本ミルクコミュニティ、明治乳業、森永乳業で展開)、キャンペーンTシャツやミニポスターシールなど、各種ツールを活用する。
乳業界では昨秋から、生産者と乳業者(生・処)の団体、(社)日本酪農乳業協会が中心となり牛乳・ヨーグルト・チーズのうち1日3回(3品)食べ生活習慣を改善する「3‐A‐Day」運動を本格的に展開。農協系の乳業者団体、(社)全国農協乳業協会は今年から「生乳鮮度重視牛乳」で消費拡大推進を打ち出した。大手メーカーも差別化が難しい牛乳で「おいしい牛乳」「成分調整牛乳」の新製品を相次いで上市。生・処のこれらの活動の相乗効果で、いかに消費減退に歯止めをかけ、消費者に牛乳を飲んでもらえるか期待される。(山本大介)