日本の甘くておいしい青果物を海外へ 海上輸送で低コスト化に成功

平成30年度食料産業局長賞を受賞したアライドコーポレーションの氏家勇祐社長。右は新井ゆたか局長(当時)=提供写真

平成30年度食料産業局長賞を受賞したアライドコーポレーションの氏家勇祐社長。右は新井ゆたか局長(当時)=提供写真

横浜市に本社を置く食品輸出入商社「アライドコーポレーション」は国産農産物などの海外輸出に取り組む優良事業者だ。3月15日、東京・内幸町で開かれた表彰会場の壇上で、氏家勇祐社長は農林水産省の新井ゆたか食料産業局長(当時)から賞状を受け取り「ようやくここまで来た」と感慨もひとしお。5年近くにわたった日本産青果物のタイなどへの輸出事業を振り返っていた。

タイで柿1個800円に驚き…

実母が著名なタイ料理研究家で、自らもタイに留学したことある氏家社長。元総合商社のタイ駐在員だった父親から引き継ぎ家業の社長に就いたのは2001年のことだった。

タイ国内に製造ラインを複数構え、ゲンキヨーワン(グリーンカレー)、トムヤムクン、ガパオ(バジル炒め)セットなどタイ料理のヒット商品を次々と生み出し日本市場に出荷した。品質の良さと丁寧な仕事ぶりが評価されると、大手小売企業からOEM(相手先ブランド生産)供給を依頼されるようにもなり、事業にも厚みが広がった。

そして、2015年から氏家社長自らが陣頭指揮を執って新たに着手したのが、日本の甘くておいしい青果物を海外の食卓に届ける輸出事業だった。日本とタイを結ぶ輸出入の輪。満を持しての航海となった。

平成30年度食料産業局長賞を受賞したアライドコーポレーションの氏家勇祐社長。右は新井ゆたか局長(当時)=提供写真

きっかけは、日常のふとした出来事だった。タイにある高級スーパーの陳列棚を見て回っていた時のことだ。日本のスーパーなら1個78円ほどで売られているような日本産の富有柿が約800円で売られていた。その隣には、1本100円もしないような石焼き芋が、1kg当たり約5500円の値を付けていた。

「こんな値段でも買う人がいるのか。それにしても、柿1個で800円はもうけすぎだ」。そう感じたという氏家社長。早速、知り合いの取引先などに声を掛け、事業化に着手。数ヵ月後にはバンコクで開催された食品展示会に、日本産の青果物を出展。事業への手応えをつかんだ。

中でも、競争力を持たせるために力を入れたのが、徹底した輸送方法の見直しだった。それまでの日本産青果物の輸送といえば、ほとんどが航空便を利用。輸送コストは桁違いに高額化した。氏家社長はこれを海上輸送に切り替え、CAコンテナを利用することで低コスト化に成功した。

CAとは、「制御された空気」の意。冷却に加えてコンテナ内に窒素を送り込み、低酸素化することで青果物の呼吸を抑制。輸送中の鮮度低下を防ぐという画期的な輸送方法だった。

さらに、タイ側にも冷蔵倉庫内に鮮度保持機器を設置。一度も外気に触れさせないことで、販売期間をそれまでの最大2倍に伸ばすことに成功した。

実績を重ねることでタイ国内での取引先も増えていった。当初は1回当たり100~200kgだった輸出量は、今では週当たり10~30トンにも。柿、イチゴ、リンゴ、メロン、桃、サツマイモなどが好まれているという。

中でも人気の上位にあるのが、果汁をいっぱいに含んだ桃。一大生産地福島では原発事故からの風評被害で、長らく販売不振が続いていた。そこに寄せられたタイからの需要。「輸出が定着することで日本の農家とタイの消費者が喜んでもらえれば」と氏家社長は話している。

農産物輸出の事業化に先立ち、氏家勇祐社長が出展したタイの展示会=提供写真

そこで氏家社長が足しげく通ったのが、東京都が管理し日本最大規模を誇る公設卸売市場の大田市場。ここで趣旨に賛同する“仲間”を見つけ、とうとう得たのが買参権だった。「世界に向け青果物輸出を手掛ける大手企業と、ようやく同じスタートラインに立てた」と同社長。日本産青果物の輸出を手掛けようと決意して約1年後のことだった。

日本各地の生産農家へも頻繁に足を運んだ。日本有数の農業県がひしめく東北地方や北関東、遠く九州へも自ら出掛けていった。自治体の農政担当職員や農業組合の幹部らを前に、日本産青果物の輸出の可能性と将来展望を熱く語った。

海外輸出を始めれば競争原理が働き、一時的には商品の相場が下がることはあり得る。だが、それでも海外には貪欲な消費があり、中長期的に見れば日本産青果物の市場は維持されていく。将来的な人口減が続く日本市場だけに頼っていては、これからの展望は開けない、と。

こうした説得が次第に広がりを持ち、賛同者を増やしていくことにつながっていった。今では、全国の多くの農家や農政担当者たちが同社の取組みに賛意を示し、協力をしている。

日本第2位の農業生産額を誇る茨城県もそうした一例だ。同県は、人口290万人のうち農業従事者が11万人もいるという日本屈指の農業県。ここでも氏家社長は、海外輸出の重要性と産品ごとの可能性を粘り強く提案している。タイにとどまらず、受け入れてくれそうなシンガポールやマレーシアなど周辺の東南アジア諸国も、もちろんターゲットだ。

一方、タイほか受け入れ先の国々では、食の安全に対する意識の向上などから輸入規制を厳しくする動きも広がっている。産地の表示義務付けやリパックの規制などだ。こうした認証の対応についても、タイに現地法人「バンコク・フード・システム」を持つアライドコーポレーションの優位性は固い。

「いつの日にか、タイの道ばたにある屋台で日本産の柿が普通に売っている時代が来るかもしれない。そのためにも次のステージに進まなければならない」と氏家社長。その目には確かな決意がみなぎっていた。

(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)

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