M1で一躍注目のコーンフレークは成長市場 新たな顧客を獲得できた要因は

コーンフロスティ

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「M1グランプリ2019」で優勝したミルクボーイのネタで取り上げられ、注目が集まる「コーンフレーク」。SNSなどでは、久しぶりに購入したなど投稿が見られるが、実は成長基調にある元気な市場だ。日本スナックシリアルフーズ協会が公表した2018年の生産金額は前年比3・4%増の91億円となった。シリアル市場をけん引してきた「グラノーラ」の停滞で市場全体の生産金額が2・4%減となるなか、好調に推移している。従来の箱入りから、スタンディングパウチ形態に進化させたことで、ターゲットの子どもに加え、大人層など新たなユーザーの獲得に成功したことが主な成長の要因だ。

市場に突如吹いた追い風を歓迎

ミルクボーイの優勝に、日本ケロッグは、ツイッターで「コーンフロスティ1年分をプレゼントしたいと思います」と投稿し、コーンフレーク市場に突如吹いた追い風を歓迎する。

コーンフロスティ

同社は、1962年、米国ケロッグ社の子会社として設立された。コーンフレーク、玄米フレーク、オールブラン、フルーツグラノラなど多種多彩な商品を提供し、日本の市場をつくり上げてきた。

日本食糧新聞社が発行する「月刊食品工場長」2019年6月号に掲載した井上ゆかり社長の、100年以上続くケロッグ商品を次世代へとつなぐ取り組みのインタビュー記事を一部抜粋する。

日本ケロッグの成長戦略は 社長インタビュー

--まずは御社の経営状況とシリアル市場の現状からお聞かせください。
 
[井上]おかげさまで2018年度は数量・金額ともに前年実績をクリアでき、マーケットシェアも2.7ポイント上昇して成長しています。一方で市場全体は伸びておらず、シリアルのパイオニアとして市場の底上げを十分できていない点で、本来の使命を果たせていないと感じています。

日本で調査すると、過去1年間でシリアルを購入された方は約40%いらっしゃいますが、今朝シリアルを召し上がった方は4%しかいません。毎日食べていただくためにはもっと細かな商品戦略と消費者のセグメンテーションが必要だと考え、数年前からこれに取り組んでいます。

一番大きなターゲットは「マルチタスクウーマン」で35歳から55歳までの女性です。出産後すぐに職場復帰する女性たちは家事・育児・仕事と毎日本当に忙しいので、ご自身とお子さまに食べていただくという点で非常に重要なターゲットです。

その次が6歳から12歳ぐらいまでの「キッズ」、続いて中高校生から大学生までの「ティーンプラス」、そして「ミレニアル世代」、健康を気にし始める40代以降の男性軍「ストレスサラリーマン」で、最後が「アクティブシニア」です。

日本ケロッグの井上ゆかり社長

この幅広いセグメントにどんな商品を提供するかが戦略の基盤となります。2017年に低迷していたシリアルの業績が2018年に浮上できたのは、細かなセグメンテーションとそれに合った多種多品目の効果が表れてきたからだと分析しています。

1種類の商品では飽きるため、毎日飽きずにお召し上がりいただくには多種多品目が必要です。また、昨年度はキッズの定番3品が好調で、2桁成長だったことも業績アップにつながりました。2018年にパッケージを箱から袋のジッパータイプに変更したことも、手に取っていただくきっかけになったと思います。

以前の日本には「手抜きの食事は悪い」という考えがあり、お母さんたちもシリアルの利用をためらうところがありました。しかし、女性の社会進出など時代の変化とともにそれが払拭され、食物繊維やミネラルなどの栄養バランスが良くヘルシーで、手軽で時短になるケロッグ商品の本来の魅力がようやく伝わったと感じています。

--新たな戦略は何かお考えですか。

[井上]今年の大きな戦略は「食べていただく戦略」です。商品の良さを知っていただくには、とにかく食べていただくのが一番ですので、大々的なサンプリングを実施します。一つ目が、幼稚園や保育園などお子さまを預かる施設でのサンプリングです。初年度の今年は30万個の予定ですが、将来的には年間50万個まで増やしていく考えです。

二つ目が女性へのアプローチを考えた美容院、リラクゼーションサロンなどでのサンプリングで、こちらもフルーツグラノラを中心に30万個を予定しています。三つ目が総合スーパーさまなどでの店頭サンプリングで、こちらは4年前から徐々に行っており、大型店では2日間で1万個の試食が出ます。

店舗の評判も良く、2017年からサンプリングを始めた店舗では、シリアルのカテゴリーの売り上げが1割伸びたそうです。弊社の商品だけでなくカテゴリーのプラスになっている点で、非常に意味のある営業活動だと考えています。昨年は30店舗で実施しましたが、今年は地方の大型スーパーマーケットさまも含めて100店舗を目指しています。

--購入につなげるには、食べていただくのが一番だということですね。

[井上]購入のきっかけづくりとして「絶対もらえるキャンペーン」も2017年から行っています。パッケージに印刷された点数を集めて応募する形で、昨年は締め切りの8月末に予想をはるかに超える応募がありました。

実は、中身を食べ切らなくても応募券を切り取ることができます。1年間日持ちするので、応募券を先に切り取って、後でゆっくり食べていただくことも可能です。ご家庭に常備して毎日食べていただけるよう、そうした戦略も取っています。

従来の箱入りからスタンディングパウチ形態に進化したコーンフレーク

--今年は家庭向け、一般消費者向けの戦略が中心となるわけですね。

[井上]「喫食機会を増やす」という観点から、企業向けに福利厚生の一環として弊社のシリアルをご利用いただけるよう、「オフィスケロッグ」というサービスを新たに提案しています。朝食の欠食による影響として、生活習慣病をはじめとした健康面はもちろんのこと、労働生産性の低下にもつながることが指摘されています。

昨今は各企業が健康経営や働き方改革に取り組んでいるので、「朝食を提供することは従業員の生産性の向上に役立ちます」という切り口で提案しています。このサービスを利用される企業さまにはシリアルを入れたディスペンサーを置かせていただき、定期的に種類を変えて、従業員の方に飽きることなく召し上がっていただけるようにしています。

--企業からの反応はいかがですか。

[井上]「社員の出勤時間が早くなり、朝型経営に変化した」「新卒採用の際に、食の福利厚生があることがPRにつながった」などの声を頂いています。意外だったのは、大企業よりも中小企業の方がこのサービスを積極的に活用してくださることです。

優秀な人材を獲得するためにより魅力的な福利厚生を提供したいと思われている中小企業が多く、「人気の福利厚生である食事の提供をしたいが社員食堂を作るのは難しいので、導入しやすいシリアル朝食を」というケースもあります。

こちらも1000社を目標に提案活動を進めます。一時的なブームではなく地道に広げていくのがケロッグのスタイルですので、テレビコマーシャルで派手に宣伝するのではなく、実際に食べていただき一人一人ファンをつくっていくという形で進めていきたいと思います。

--業務用の戦略はいかがですか。

[井上]揚げ物の衣にコーンフレーク、サラダのトッピングに玄米フレークやフルーツグラノラを使っていただくといった食べ方提案を飲食店向けに行っています。サラダのトッピングは店頭サンプリングでも行っていますが、食べ方のバリエーションが増えるとより多くの世代の方に食べていただけるので、新たな食べ方提案にも力を入れていきたいと思います。

--「食べていただく戦略」はシリアル市場の底上げにもつながりそうですね。

[井上]昨年のシリアル市場は少し残念な結果でしたが、今年の1~3月はマイナスが改善されていますので、市場の勢いはもう一度上がっていくと推測しています。ライフスタイルの変化とともに食の部分でも簡便性と健康が求められる時代になってきましたので、日本におけるシリアル市場は今後ますます伸びていくと考えています。

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