農水省、ビスケット製造事業者に「画期的」新補助事業 原材料の内外価格差拡大で

ビスケット業界は原材料の内外価格差と海外製品の輸入拡大という課題に直面

ビスケット業界は原材料の内外価格差と海外製品の輸入拡大という課題に直面

農林水産省は、ビスケット製造事業者向けに、新たな補助事業を導入した。ビスケット製造用に使用する小麦粉などに対し、製造実績に基づき、小麦のマークアップ(輸入差益)の引き下げ相当額を支払う制度を2020年に実施する。

制度の新設を受け、業界団体の全国ビスケット協会の島田純専務理事は、「ビスケット事業者の不利な状況に対応した画期的な制度」と歓迎の意向を示し、「国内農産物の需要者である、食品産業メーカーの堅実な発展が、国内農産物の販路拡大、国内農業の健全な発展につながる」と語る。

同協会では、これまで小麦粉、砂糖、バターなどが国内と海外では価格に隔たり(内外価格差)がある現状に関し、海外との公正な競争環境の構築を農林水産省などに求めてきた。

加えて、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の発効で、ビスケットの平均約22%の関税を段階的に引き下げ、撤廃されることが決まったことに加え、TPP11など自由貿易が進むなど、ビスケット業界は、原材料の内外価格差と今後、海外製品の輸入拡大という課題に直面していた。

ビスケット業界は原材料の内外価格差と海外製品の輸入拡大という課題に直面

さらに、オーストラリア産、カナダ産小麦のマークアップは軽減されているが、ビスケット業界が使用する米国産小麦のマークアップは高止まりしているという特殊な要因がある。

こうした状況を受けて、全国ビスケット協会の伊藤雄夫会長(イトウ製菓会長)は昨年の総会で、ビスケット業界は、原材料の内外価格差という不利な条件を負っていると指摘する。政府が進める、小麦のマークアップの引き下げと粗糖価格の引き下げなどについて、業界の実情を踏まえたより実効性のある対策を求めており、協会が直面する問題に農林水産省が応えた格好だ。

今回の新制度は、「ビスケット類の表示に関する公正競争規約」第2条に定めるビスケット類で、2019年4月1日から2020年3月31日までに製造されたビスケットの原料に使用された小麦粉やプレミックスが対象。農林水産省食料産業局に、支払金額の算定の基礎となる資料を提出する。

また、小麦などを購入した取引先(製粉メーカーや小麦粉卸売業者)に小麦粉などの購入に関する資料の提出も求める。提出資料を確認した上で、支払額を決定した後、メーカーはあらためて、補助事業に関する申請を行う。支払いは、早くて2021年1月以降とみられる。

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