コロナ禍で食品バイヤーの活動にも制約 問われた変化対応スキル【日本食糧新聞社アンケート】

コロナ禍で日常生活に変化が起きた中で、外食店・居酒屋などの営業時間短縮や営業自粛など食品業界も大きな打撃を受けている。一方で、巣ごもり消費という意味で、家庭内消費への訴求が活発になる一面もあり、食品バイヤーにとっても業務視点や意識を変える必要性が出てきた。バイヤーたちの活動において、どのような変化が起こったのか。日本食糧新聞社発行メルマガ会員約10万人のうち食品系バイヤー236人を対象にアンケート調査を行った。

「商品探しが困難」が1位

  • コロナ禍でご自身の業務にどのような変化がありましたか(複数回答)
アンケート対象:日本食糧新聞社発行メルマガ会員のうち食品系バイヤー236人
調査期間:2020年12月18〜25日

外出自粛やテレワークなどが始まり、従来のように仕入れ先、顧客への訪問や、販促活動などが難しくなったと感じているバイヤーが多くいることが読み取れる。「オンライン商談会が増えた」というように、他業界でも同様に起こった業務の変化が見られた。

その弊害としてだろうか、実際に顔をあわせての商談が減り、価格交渉や施策への対応が困難になっていることも浮き彫りとなった。また実際に足で歩いて、モノを見に行くというスタイルができなくなり、バイヤーならではのアンテナを張り巡らすといった活動も自粛となったのは痛手のようだ。

また、もともと食品業界のキーワードの1つでもあった健康訴求に関しては、コロナで拍車が掛かったと思われる回答が見られた。半面、次なるトレンドが見えにくくなったり、魅力的な新製品が減ったと感じるバイヤーが多かった。

情報収集先は依然「展示会・商談会」が1位

  • 取引したい商品情報は、どのようなところから入手していますか(複数回答)

コロナ禍での情報収集先は、依然として展示会・商談会が多かった点にも注目したい。昨年はリアルでのさまざまなイベントや展示会・商談会などが中止になったが、その代替としてオンラインで開催したケースもあり、そこでの情報収集ができたもよう。

また、メーカーから発信するニュースリリースや、専門紙をはじめとする媒体を読むというのは(おそらくオンライン版と考えられる)、テレワークでの時間が増えたことによる影響だろうか。さらに得票数としては少ないが、SNS、コミュニティーなどで情報収集しているという声があった。コロナ禍が長引けば、これらネット上の情報源やSNSツールの活用はより一層活発になると予想される。

変化に対応してスキルアップも

  • コロナ禍による変化は、ご自身のスキルアップやキャリア形成にどのような影響があると思いますか。(回答から一部抜粋)

・DX推進など変化への対応力強化がより求められる。
・オンラインでのセミナーが増え参加しやすくなり、情報量が増えスキルアップした。
・オンライン商談について、ZoomなどのWebツールの使いこなしが必要となっている。
・これまでの常識や考え方が通用しなくなった。
・セミナー等の開催が減り、セミナー講演会等の生の声を聴く機会が減った。
・ユーザー訪問機会が減り、直接見て理解したり、訪問先での人間関係構築が困難になった。
・外出する機会が減った分、語学習得やオンライン・ITスキル向上に良い影響があった。
・営業形態が大きくかわった。
・海外工場への製造指導が出来ない。
・先を読む力が問われる
・地方商品との出会いが少なくなった。見つける場所がない(展示会の開催がないので)

回答者の自由記述からは、業務スタイルに対し、いきなり変化を求められた中で、対応能力が試されたという内容の意見が散見された。オンライン商談などの新しいシステムに即時対応しなければならない、これまでのやり方が通用しなくなったなど、あまり準備期間がないままに強制的に新しい業務方法への適用が求められたのは、食品バイヤーも例外ではなかった。

またあらゆるリアルの機会が減ったため、国内外での新しい仕入れ先を見つけることが困難になったという意見も。その一方で、新たなスタイルに積極的に対峙し、自己学習、スキルアップに当てるなど積極的姿勢を持つバイヤーも少なくなく、その具体的な内容としてオンラインセミナーへの参加の機会も増えたようだ。テレワークによる移動時間の減少で、時間を有効に使い、向学心を養うよい機会でもあったのではないだろうか。

新しい業務スタイルへの移行が及ぼす影響に注目

食品業界に関わらず、新型コロナウイルスの影響で業務スタイルの変化を余儀なくされたビジネスパーソンは多い。しかし、今回のアンケートを見る限り、当初は業務への戸惑いがあったものの、思いのほか新しい様式に対する適応は早かったのではないだろうか。

ただしその裏で、商談などで培われる相手先との関係性の構築、よりリアルな情報収集、先の見えにくいトレンド予測など、やはりマイナス面が生じていることは否めない。今後は新スタイルの中で、この穴をどのように埋めていけるかが鍵となる。

生活様式が変わった中で自己学習時間の確保によるスキルアップや新たな情報収集方法を模索するなど、仕事に対する積極的な姿勢も見られ、この点に関しては、ここ1年で始まったことではあるが、長い目で見れば業界自体が変わるきっかけの1つになる。2021年、先行きは不透明な部分も多いが、常に変化に対応する柔軟性が食品バイヤーにとってもキーポイントとなりそうだ。

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