FABEX2022:主催者特別セミナー 農政調査委員会・吉田俊幸理事長 米産業に未来はあるか

農政調査委員会吉田俊幸理事長

農政調査委員会吉田俊幸理事長

●業界イノベーションによる需要創造を

農政調査委員会の吉田俊幸理事長は13日、ファベックス2022主催者特別セミナー・お米未来展共同特別企画で「米産業に未来はあるか~米産業・水田農業のイノベーションと米政策のパラダイムシフト」をテーマに講演。食生活の多様化や人口減、高齢化の進展でコメ離れが加速する中、加工米飯や米粉など加工品の商品開発による需要創造やマーケットイン型の海外市場拡大、市場での価格形成の重要性を強調した。

コメの本格的な生産調整から50年が経過し、コメ産業や水田農業は縮小の一途をたどっている。多額の助成金に依存したコメの生産抑制と価格維持政策が継続され、今やゆでガエル状態。財政と消費者に二重負担を強いている。主食用米価格は需給に左右されて変動し、経営安定制度が機能していない。結果的に国際的な食糧逼迫(ひっぱく)への備えも、硬直的な対応にとどまっているのが現状だ。

国内市場は食生活の多様化や人口減、高齢化によるコメ離れは加速的に進み、もはや主食とはいえない状況。消費減の主役は若年層ではなく60歳以上の高齢者で、しかも家庭で減少している。料理や商品の種類が多い麺やパンに対し、コメは明らかに競争力が低下し、日本人の主食はコメから麦製品へと変化しているといっても過言ではない。

コロナ禍でも家庭でのコメ消費は減少しているのが良い例で、半面伸長しているのが無菌包装米飯や米粉などの加工品。海外でもグルテンフリー市場は拡大し、小麦粉価格上昇も加わり、輸出拡大が生命線となっている。

海外の人口増や経済発展は、商業用米輸出はまさにビジネスチャンスを迎えている。食産業を中心に市場開拓の動きが進み、コロナ禍でも輸出量は拡大。全体の6割を占める香港やシンガポールで、大手コメ卸や輸出事業者による需要開拓が功を奏しているためだ。海外と一言で言っても国によって規制や価格、嗜好(しこう)は大きく異なり、市場を熟知したマーケットイン戦略が欠かせないことを物語っている。(佐藤路登世)

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