BugMo、昆虫食の味を訴求 生産体制強化も

総合 インタビュー 2020.03.16 12026号 01面
コオロギのホールとパウダー

コオロギのホールとパウダー

松居佑典BugMo代表取締役CEO

松居佑典BugMo代表取締役CEO

喜久屋では珍味として創業時から取り扱う

喜久屋では珍味として創業時から取り扱う

SDGs(持続可能な開発目標)の浸透に伴い、環境負荷を低減できる昆虫食に注目が集まっている。食用コオロギの飼育加工を行う昆虫食ベンチャーのBugMo(京都府)は従来の高栄養を切り口にした提案ではなく、コオロギの「感性に訴える味」の訴求で昆虫食の定着へ挑む。コオロギ飼育の自動化に向けたシステム作りも進めており、中長期的にはブロックチェーンで品質と量を担保しつつ、先進国・途上国問わずどこでも生産できる仕組みの構築を目指す構えだ。同社の松居佑典代表取締役CEOに今後の展望などを聞いた。(篠原里枝)

–創業時になぜコオロギを選んだのか。

松居 カンボジアで現地の人が高価な昆虫を振る舞ってくれ、感動した体験がある。畜産動物飼育のために、同国などで森林伐採して飼料を栽培する状況を鑑み、資源の有効活用ができ、なおかつ世界中で育てられるタンパク源として昆虫に目を付けた。中でもコオロギは雑食性で特定の植物に依存しないため、これまで農家が廃棄してきた野菜や米ぬかで飼育できると考えた。コオロギは、必須アミノ酸9種・BCAAを豊富にバランスよく含有した低脂質高タンパク食材。主にHACCP取得済みのベトナム協力工場で加工しているが、与えるエサや環境をコントロールすることで、栄養の強化に加え、風味の調整がかなうのも特徴だ。

–どのような商品を開発したか。

松居 高栄養の特徴を生かし、これまでプロテインバーを販売してきた。良質な栄養を豊富に含むが、これだけではサプリメントなどと戦うのは難しいと考え、約1年前から方向転換を図った。高栄養だけを訴求するのではなく、コオロギの持つオーセンティックなうまみやコクといった“感性に訴える味”を周知することが必要だ。現在はコオロギのパウダーをメーンにしており、うまみ原料としてのパウダーの強いコクを感じられるベイクドフードも開発した。また、だしとしての可能性を探るべく、和洋のシェフとともにさらなる開発に取り組んでいる最中だ。

–喫食への心理的ハードルに対しては。

松居 2月20日に大阪市中央区のOMMビルで三井食品関西支社が開催した「関西メニュー提案会」に初出展したが、ブースを訪れる人は多いもののタイミングの早さを感じた。一方で料理人にとって、想像力をかき立てる食材として評価を受け、サンプル依頼もいただいた。サステナブルな食材ながら、顆粒だしのように混ぜて使用することで、うまみのあるメニューができる。他社に比べひと手間かけた加工を施しており、まずは味の良さを知ってほしい。

–今後の計画は。

松居 2月に安定供給できる体制となった。6月には国内でコオロギ飼育の自動化システムが完成する計画だ。地域の農家らと手を組み、さらなる安定供給体制を整えたい。中長期的にはこの仕組みを成熟させ、アジア・アフリカなど創業のきっかけになった国で運用し、さらには世界中でタンパク質の国産国消が実現することで、誰もがおいしく栄養のある食に等しくアクセスできる世界を目指す。

●京都・喜久屋、仕入れ倍増 若年層購入増える

京都市の錦市場にあるイナゴなど日本古来の昆虫食を扱う珍味店、喜久屋で昆虫食の今昔について話を聞いた。

創業時からイナゴの佃煮やざざ虫の佃煮、蜂の子を扱っている。伝統的な食文化の一つとして、文化の継承の意味を込めて、これらを扱ってきた。これまでさほど売れるものではなかったが、ここ2年で仕入れ量が倍以上になっている。購入層は10~20代で罰ゲームのように扱う人も当然いるが、まだ少数派の昆虫食を実践することを、自身のアイデンティティーととらえて購入する常連もいる。SNSにその体験を載せる人もいるようだ。薬膳、漢方のように栄養面が明確になれば、さらに販売しやすくなる。

〈店舗概要〉▽所在地=京都市中京区錦通富小路東入ル東魚屋町198▽電話番号=075・221・4416

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