北海道ラーメン探訪:生き残りかける名店たち 個性光る新事業挑戦
【北海道】道内ラーメン業界は、長引くコロナ禍で約2年間苦境に立たされてきたが、11月1日から警戒レベルがステージ1に引き下げられ、飲食場面での4人以内の利用制限も緩和。元祖さっぽろラーメン横丁や新千歳空港ラーメン道場では回復の兆しが見え始め、客足が戻りつつある。観光地をはじめ飲食店への人流回復が次第に見込まれるが、これまで各店が実施してきた消毒や換気など基本的なコロナ対策に加え、新事業への挑戦もコロナ禍を生き延びるための重要戦略となりそうだ。(角守建哉)
関東以北最大の歓楽街にある、すすきの観光協会によると「緊急事態宣言が解除されたことで人出は多くなってきたが、コロナ禍以前に比べればまだ戻り切っていない。ラーメン横丁も本来の姿に戻るまでまだ時間がかかるのではないか」と言う。10月15日からは、216軒の参加店で利用できるプレミアム商品券「すすきのプレミアムチケット」を販売開始。年末にかけての人流回復に期待をかけている。
ラーメン業界に詳しい関係者は「観光客を中心としていた店舗は売上げ6割減という話も聞く。原材料高騰の影響で麺が値上がりすることもあり、厳しい状況はまだ続く」と語る。このためラーメン店では、テークアウトやデリバリーの導入など、新事業への取組みが積極化している。
札幌の人気ラーメン店「麺屋 樹」は昨年12月、イオン札幌藻岩店にチキン南蛮やザンギを提供する定食屋「いつきのご飯」を出店。イートイン以外では「らーめん専家 羅妃焚」を運営するクリーンハウスが「キッチンカー 三美焼鳥」をスタート。
札幌をはじめ、道内外に「北海道らーめん奥原流 久楽」を展開しているアップグレードは、12月中旬から千歳店の駐車場スペースを活用した屋台風テークアウト事業を予定している。
移動販売の利点を生かして新事業を立ち上げたのが札幌発の担担麺専門店「175°DENO担担麺」を手掛ける「175」だ。昨年10月、冷凍車で自社商品や有名飲食店のメニューを移動販売する新会社「175togo」を設立。道内外の各市町村を中心に商品と思いを届けている。
ラーメン需要を後押しする動きも見られ始めた。製麺会社などが主体となり、割引クーポン発行やスタンプラリー抽選会を行う「さっぽろこだわりのラーメンROAD」は年末まで開催。
旭川では、広告デザイン会社が市内有名店のラーメンを冷凍販売するEC(電子商取引)サイト「北海道屋台」を開設するなど、業界を盛り上げる起爆剤としてコロナ禍で売上げが落ち込んだ飲食業の回復につなげる狙いだ。
北海道ラーメンは長い歴史があり、札幌の味噌ラーメンや旭川醤油ラーメン、函館の塩ラーメンはもちろん、釧路ラーメン、苫小牧カレーラーメン、旭川しょうゆホルメン、芦別ガタタンラーメン、長万部浜チャンポンなど地域に根差したラーメンの根強いファンも多い。
コロナ感染拡大はラーメン店にとっても前代未聞の災害と呼べるかもしれない。経営者からは「先行きが見えないので、まずは現状維持が第一」との声が多い一方で、「コロナ禍しかできないことが必ずある。新しいことに挑戦する良い機会」と前向きな意見もあった。
ラーメン同様、店ごとに個性が光る新事業への挑戦。道内ラーメン業界をニュースタイルへ変えていく店主たちの経営手腕に期待がかかる。