キャッシュレス還元は中小のためならず 販促合戦懸念も 中部小売業

小売 ニュース 2019.11.11 11969号 01面
田代正美バローHD会長兼社長

田代正美バローHD会長兼社長

【中部】消費増税に伴うキャッシュレス・ポイント還元事業が、スタートして1ヵ月が経過した。中部流通業界でも、その承認が遅れていた企業も参戦し、ポイントを含めた販促合戦の様相も呈し始めている。中部有力小売業からは、「当社の税金が競合店の販促に使用されるようなもの。こんな歪んだ政策はおかしい」と荒らげる声も聞こえる中、地元の岐阜県多治見市の多治見商工会議所会頭も務めるバローホールディングス(HD)の田代正美会長兼社長からは「かえって中小企業のためにならない」と、中小企業が多い食品SM業界そのものを心配する。(海野裕之)

その理由として田代会長は「今回、(5%還元に伴う)売上数値が乗った時、来期この販促をやめられるかが問題」とし、多治見商工会議所会頭の立場では「中小をつぶす政策だ」と発言しているという。

また、「販促に頼ると、スーパーとしての1丁目1番地を見失いかねない。お客さまが求めるのは良い商品を安く買うこと。商品やサービスなどにエネルギーを費やすべき」とSM業界全体を危惧し、バローとしては「商品力をさらに磨いていく」考えだ。

ただ、中部のキャッシュレス還元対象外の有力スーパー各社に影響を聞くと、5%還元の影響は各社総じて認めているが、開始1ヵ月の段階では「思ったより影響は少ない」という声が多い。もちろん各社さまざまな対抗策を講じているが、影響が少ない一つの理由として、当初はクレジット含めたキャッシュレスの客層が、5%還元の店舗に流れると見ていたが、実際は「減っていない」ことを挙げる。

一方、キャッシュレス還元対象企業は、「お客さまの認知がまだ低い」として、折り込みチラシの全面で5%還元を記載する企業など、各社、店外、店内で5%還元を訴求。効果の一つとして、電子マネーを含めたキャッシュレスの会員が増え、狙った顧客の囲い込みなどにつながっており、今後さらなる効果を期待している。

今回のキャッシュレス還元事業の始動で、対象外企業もさまざまな政策でキャッシュレスの利用率は拡大傾向にあり、小売業全体のメリットを考えると、キャッシュレスの顧客が増加したことで、レジ待ち時間の解消を含めて、全産業共通の課題である人手不足解消につながっていく点は評価として挙げられ、国が進めるキャッシュレス推進活動に沿ってはいるが、問題は国の政策なのに「公平性がまったくない」との声が上がることと、業界全体を巻き込む無益な競争をせざるを得ない状況を作り出してしまったことがある。今後、さらなる過当競争を懸念する声は多い。

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