パックごはん市場、想定上回る急伸長 供給は厳しさ続く

 パックごはん市場は想定外の急伸長が続き、供給が追いつかない状況となっている。3割以上のシェアを占める業界トップのサトウ食品では、「サトウのごはん」が11~21年の10年間で2倍、5食パックでは2.6倍で推移。さらに今年の第6波、7波で自宅療養者向け支援物資に各社のパックごはんが活用され、その簡便性やおいしさが再認識され、予想以上に需要が拡大。一方で、包装資材の高騰・供給不足リスクに加え、業界全体でも生産能力に限界がある。将来を見据えた投資も進むが、新たな生産ライン稼働までにタイムラグがあり、当面供給の厳しさが続きそうだ。(山本大介)

 パックごはんを意味する無菌包装米飯の21年生産量は、前年比4.6%増の20万6179t。12年連続増加し、初めて20万tを突破した。伸長要因は11年の東日本大震災以降の防災意識の高まりで、非常食に常備する需要が高まったこと。加えて、お一人さま高齢者など世帯構成の少人数化や女性の社会進出といったライフスタイルの変化による日常食としての利用も増えた。電子レンジ調理など簡便・時短ニーズが多様化し、パックごはんが困ったときのお助け食品ではなく、主食のポジションに変化したことも好調の要因だ。

 さらに今年に入って急伸長した背景には、新型コロナ拡大による自宅療養者向けに、各自治体が支援物資として配布したため。喫食機会が増え、その簡便性やおいしさを消費者が再認識した。東日本大震災による非常食用の普及はエリアが限定的だったが、世界を巻き込んでの長引くパンデミック下で全国規模でニーズが高まっている。市場開拓の苦労を知る佐藤元サトウ食品社長は、「いままでと全く違う伸びを感じる」と驚きを隠さない。

 この10年間で主食用米の需要は約10%減少。一方のパックごはんは本紙推計で16年に600億円弱だった市場が毎年40億~50億円、約7%ずつ成長し21年には890億円強。コメ離れが進む中で、今後、コメからパックごはんへ1%でも切り替わると1000億円市場も見えてくる。しかし、「全メーカーが増産体制をとっても、誰も対応できないのがコメビジネスだ」(佐藤社長)というほど供給が追いつかない。同社でも品薄状態で「新潟県産コシヒカリ」などの主力商品を中心に生産を強化し、商品ラインアップの整理や一部商品の休売で対応している。

 各社はライン増設や新工場への投資も同時に進める。サトウ食品は約45億円を投じ、24年にパックごはん専用工場の「聖籠ファクトリー」に新たな生産ラインを増設。日産当たり20%供給増となり、年約4億食の生産体制を目指す。アイリスフーズは24年春に九州の鳥栖第一工場を稼働予定。昨年本格参入したジャパンパックライス秋田も今年中にようやく工場のフル稼働となり、次の第二工場新設に向けた検討に入った。業界を挙げて安定供給に尽力しているが、このままの需給バランスが続くとさらなる再投資も視野に入れる必要が出てきそうだ。

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