日本獣医生命科学大学、初の市民向け単独講座開催 テーマは「食の安全・安心」

天野彰氏

天野彰氏

特別講座の様子

特別講座の様子

 日本獣医生命科学大学は、10月2日から3回にわたり、単独で初となる市民向けの特別講座「食の安全・安心を考える」を同学内の講義室で開催した。講師は3月まで同大学の食品科学科で工場衛生学の非常勤講師を務めていた、高崎健康福祉大学農学部客員教授の天野彰氏が担当し、地域住民など十数人の受講生が集まった。同大学の食品科学科は、食品に関する多種多様な専門科目を学ぶことができ、メーカーをはじめ、卸・小売、フードサービス、各種分析機関などの食品関連企業に毎年卒業生を輩出している。自身もサンヨー食品などの食品メーカーに勤務していた天野氏は今回の講座を通じて、食品を提供する立場から、食の安全・安心に対し、どう対処してきたかを説明した上で、家庭でも取り組める食品衛生について受講者へ周知した。

 初回の講義は、食品の危害要因を知ることだった。食品の危害は、細菌やウイルスなどに由来する「生物学的危害」、薬剤や食物アレルギーなどに代表される「化学的危害」、金属片や硬質樹脂といった異物が混入する「物理的危害」に分類される。食品製造事業者は消費者の命を預かっている仕事だと自覚し、食品事故が起こらないような衛生管理を徹底していることを解説した。2回目は初回の講義に関連し、HACCPの考え方について取り上げた。現在、日本国内で食べられているものは、すべてHACCP手法に基づいて製造されており、一般家庭においても食品を購入したときから調理して食べるまでに、どのようなリスクがあるかを把握し、それを改善する必要性があることを指導した。

 最終回では、食物アレルギーについて詳説した。食物アレルギーの仕組みから、原因となる食品、アナフィラキシーショックの主な症状、そして食品製造事業者が実施しているアレルゲン管理プログラムなど多岐にわたった。天野氏は「皆さまも人ごとととらえず、消費者側でも実践できる食品衛生がある。この講座をきっかけに、食品について違った角度で考えていただきたい」と述べ、全3回の講義を締めくくった。

 今回の開催に当たり、同大学教務課の藤井剣大氏は、専門性に定評のある学科とそれらの研究の第一線で活躍する教員陣が在籍する同大学において、誰もが最も関心を寄せる内容が食品にまつわることだと考え、特別講座のテーマを選定したと経緯を語った。藤井氏は「国が生涯学習を推進する中で、大学はそれを受け入れる責務がある。今後も魅力あふれる講座を企画していき、日本獣医生命科学大学を盛り上げたい」と意気込みを示した。次回の特別講座は11月11日に落語家の立川談慶氏を講師に迎え、「食と落語とコミュニケーション」のテーマで実施する。(山本圭)

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