海外通信 外食ビジネスの新発想(52)「食べる」食から「考える」食へ

2022.05.02 519号 13面
味や食感だけでなく、見た目も本物の肉そっくりの代替肉。焼くと茶色に変わる Impossiblefoods.com

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「オーシャン・ハガー・フーズ」のトマトでできたマグロそっくりの“アヒミ” oceanhuggerfoods.com

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「オーシャン・ハガー・フーズ」のウナギそっくりの“ウナミ”はナスでできている oceanhuggerfoods.com

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ガーデイン社の代替肉製品は、チキンナゲット、ミートボール、クラブケーキなど、すべて温めればよいだけになっている gardein.com

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「ル・ボタニステ」のベジー寿司ロール。7$75¢

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日本の代替肉メーカー「ネクストミーツ」もアメリカ市場に登場。焼肉、牛丼、バーガーなどの代替肉製品をラインアップ nextmeats.us.com

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フィラデルフィア、首都ワシントンなどでオープンした「ヒップシティヴェグ」のクリスピーバッファローチキン・サラダ。11$95¢。植物ベースのバーガーやサンドイッチを提供している

フィラデルフィア、首都ワシントンなどでオープンした「ヒップシティヴェグ」のクリスピーバッファローチキン・サラダ。11$95¢。植物ベースのバーガーやサンドイッチを提供している

 ●発展する代替食品が外食店に拡大中

 おいしいものをおいしく食べるだけの時代から、地球環境を考え、サステイナブルでしかもヘルシーな食の選択をする時代へ。「Eat responsibly(責任を持って食べよう)」という言葉がよく聞かれるようになった。現在、アメリカのベジタリアン人口は、総人口の5%の約1600万人、ヴィーガンは3%の約760万人。ベジタリアンでなくてもヘルシーな選択をする人が多く、ベジタリアン用の選択肢はどの外食店のメニューにも必ず含まれるようになった。

 ファストカジュアルの主流は、やはり植物ベース。メインディッシュとしての具だくさんサラダにフォーカスしたサラダ専門店の勢いが顕著だ。

 目立ついくつかを紹介すると、ベルギーのゲント生まれの「ル・ボタニステ(Le Botaniste)」のメニューは、新鮮なローカル食材を使ったヘルシーなコンフォート・フード。どれも独創的な料理ばかり。同店の「ヘルシー寿司ロール」は、キノアとコメにショウガ、ワサビ、赤サワークラウト、ターメリック・オニオン、豆腐のマリネ、ミックス野菜を海苔で巻いたもの。ジンジャーベルベット・ドレッシングとサフラン・アイオリにつけて食べる。「マジックミソ」は、グルテンフリーのヌードル、グリンピース、豆腐、根菜に味噌をかけ、ジンジャーベルベット・ドレッシングを振ったもの。デザートをとっても、フラックス・シード、そば、ブラウンシュガーを使ったブラウニーなど、ヘルシーなものばかりだ。

 「ザ・リトル・ビート(The Little Beet)」では、バスマティ米、キノア、サラダ野菜からベースを1つ選び、温野菜料理、冷野菜料理から2種→タンパク質→ソース→トッピング→の順に選んで好みのマイディッシュを作るシステムになっているが、どれを選んでもヘルシーな選択になっている。

 高級汎アジア料理の「プランタ・クイーン(Planta Queen)」では、スイカを乾燥させて味も食感もマグロそっくりに仕立てたにぎり寿司や、ウナギそっくりのナスのにぎり寿司、ソフトシェルクラブの代わりにブロッコリーの天ぷらを使ったドラゴンロールなどが食べられる。うどんはココナツミルクであえ、トリュフをたっぷり使っており、クリーミーで、アルフレード・パスタのよう。人気のメニューアイテムだ。

 セレブ・シェフのマシュー・ケニーは、世界各地の大都市に植物ベースのレストランを次々と展開。その一つ、ニューヨークの「ダブル・ゼロ(Double Zero)」は、アーモンドミルクのパルメザンチーズ、カシューナッツミルクのモツェレラなどのノンデイリー・チーズを使ったピザを専門にしている。世界一牛肉の消費量の多いアルゼンチンの首都・ブエノスアイレスにも、トリュフ入りのチーズ、アボカド、ヒラタケをニンジンで巻き、ケールをのせた「裏巻きスーパーケール」や、クリームチーズ、ビーツをグリーンとマンゴーで巻き、砂糖がけした種子とチリをかけた「裏巻きマンゴー」などユニークな料理を提供する「ムードラ(Mudra)」をオープン。ケニー氏が目指すのは、独自の技法とクリエイティビティを通して創造するヘルシーなおかつ洗練された植物ベースの料理。単なる外食ではなく、総括的なライフスタイルを提供しているという。

 伝統的な定番料理で新入するには差をつけるのが難しいが、トレンドのベジタリアンやヴィーガンでは、独創性が発揮できるから差をつけやすい。しかも、牛肉、豚肉、鶏肉、魚、乳製品など、味も見た目も食感もそっくりな植物ベースの代替食品がどんどん市場に出回り始めている。自分の健康だけでなく、地球の未来を考えて責任を持って食べる–食べる食から考える食へと意識が深まり、これからもますます植物ベースの外食店は増えそうな気配だ。

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