インサイドレポート 低価格時代の外食・飲食店 グルメ杵屋

1996.10.21 113号 5面

グルメ杵屋といえば、実演手打ちうどん「杵屋」、信州そば処「そじ坊」、サンドイッチハウス「グルメ」などのチェーン展開で知られた存在だ。

売上げ規模(年商二九〇億円)は西洋フードシステムズの三割ほどだが、業態はそば・うどんを軸にサンドイッチ、オムレツ、カレー、スパゲティ&ドリア、天ぷら、天丼、カジュアルレストラン、郊外型レストラン、レストラン&パブ、居酒屋、ロッジ、ケータリング事業と多様で、西洋フードをしのぐほどの業容の広さだ。

出店数は四〇〇店を超えており、国内有数の総合レストランだ。うどん・そばの「麺食事業」は、前記の杵屋、そじ坊の二業態で約二五〇店を出店、そば・うどん分野では国内トップのチェーンスケールだ。

店舗出店は子会社((株)ワールドグルメ)で事業展開している天丼専門店の「丼丼亭」を除けば、すべて直営出店で、この出店エリアは本社所在地の大阪、関西地区を始め、首都圏、東北、北陸、中部、中国、四国、九州と全国に及ぶ。

店舗出店は、うどん・そばの杵屋、そじ坊が主体になるが、この出店ペースはトータルで年間三〇~四〇店、これら出店の上乗せで売上げの伸び率は九%以上を示す。

バブルがはじけて賃料など出店条件が引き下がったことで、チェーン展開に加速が付いているわけだが、今年9月に入って東京、大阪の二部上場から一部上場に移行したので、資金力も強化された。

問題は人材の確保。これは店長候補など大量採用で解決している。九七年春は一五〇人を採用する方針。

外食ビジネスも市場の伸びが鈍化、企業の成長も横ばいか、よくて二、三%程度の伸び率だ。そば・うどんの「伝統和食料理」を武器に、グルメ杵屋の快進撃は続く。

成熟マーケットの外食ビジネスも大きな転換期に来ている。単に「おいしい料理」の提供だけでは消費者は納得しない。

食の「安全性」「ヘルシーさ」が求められているのだ。この点、そば・うどんは元来が低カロリーであるし、ヘルシーだ。

ポストハーベストを管理すれば、ナチュラルな素材を確保することもできる。杵屋のそば・うどんはもちろん産地契約栽培の安全な素材だ。

しかし、素材に頼るだけではマーケティングは成功しない。店づくり、料理の提供方法も重要だ。

杵屋は“実演手打ちうどん”を看板にしているので、麺は店で作っている。フレッシュな手作り麺ということだが、麺類(四六〇~一四〇〇円)ばかりではなく、定食類(七六〇~九八〇円)やミニ丼定食(九九〇~一〇八〇円)、ご飯類(二五〇~三〇〇円)、一品料理(三五〇~五〇〇円)なども提供、メニューにバリエーションを持たせている。

そじ坊も店内での製麺で、戸隠山麓でとれる信州そば(六〇〇~一六〇〇円)が売り物。そばにはワサビがつきものだが、これは信州穂高産直送の本生ワサビを使っており、ざるそばや天ざるなどに添えられて提供される(すり残したものは持ち帰ることができる)。

信州の地酒、焼酎にカモの陶板焼きや手作り豆腐などの一品料理(四八〇~一二五〇円)もある。

昼はそば処、夜はそばと酒。料理、酒のクオリティもある。チェーン展開でありながら、サラリーマンの管理職でも利用できる高級感のある運営形態を訴求しているのだ。

立地は杵屋、そじ坊ともに商業施設や都市複合ビル。店舗面積三〇~三五坪前後、客単価一〇〇〇~三〇〇〇円以下。月商一〇〇〇万円。

サンドイッチや天丼専門店、郊外レストラン、ケータリング事業についても、出店を着実に進め、西暦二〇〇〇年初頭には二〇〇〇店、二〇〇〇億円の企業規模を実現する。果たして思惑通りに推移するか、今後の動向が注目される。

◆会社概要

・企業名/(株)グルメ杵屋

・会社設立/一九六七年3月

・本社所在地/大阪市住之江区北加賀屋三‐四‐七(Tel06・683・1222)

・資本金/五八億三七〇〇万円

・取締役会長/菅野敦次

・代表取締役社長/椋本彦之

・従業員数/三二〇五人

・出店数/うどん・そば専門店二五一店、サンドイッチ専門店四六店、洋食専門店五〇店、和食専門店四九店、ケータリング部門五店、その他二店、計四〇三店

・売上高/二九〇億円(九六年3月期、前年比九・三%増)

・特色/東京、大阪一部上場会社。外食業界大手企業。うどん・そば専門店「杵屋」「そじ坊」を軸に、サンドイッチ「グルメ」、オムレツ専門店「ロムレット」、天丼「丼丼亭」など二〇業態を展開。

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