世界の人気食材 「パルミット」食通泣かせるヤシの芽の香味 豪奢な食感楽しむ
パルミットは、ポルトガル語である。英語で言えばハート・オブ・パーム、フランス語ではクール・ド・パルミエ、スペイン語ではコラソン・ド・パルマ。日本語ではヤシの芽となる。数多いサラダの中で、野菜の部で最もぜいたくな、そしてうまい素材である。
ヤシ科の植物は約二五〇属、二七〇〇種と品種が多く、原産地はマレーシア。この代表がココナッツ。ココナッツは、海流によって果実が運ばれ全世界の熱帯地方に分布。適地は石灰質と有機質に富む海岸である。
赤道を中心に南北緯度一八度の地域で年平均気温が二八度C、降雨量は最低で一〇〇〇ミリメートル以上が望まれる。
ヤシの木は一本の幹が真っすぐ上に伸び、頂点に葉を広げる。高さは一五~二五m、直径は三〇~五〇センチメートル。葉は鳥の羽形で長さ五mにも達する。決してわき芽は出さない。
熱帯に生育するココナッツは、浜辺に打ち寄せられた実が育ったもの。最近ではその有用性からプランテーションが進んできた。上等の品種を選ぶため自生のものより効率がよい。
栽培した木は七年目で花をつけ、果実は一本の花に平均五~七個、一年間の結果数は五〇~八〇個で樹齢は七五年ほど。二五年前後が壮年期で生産性も高い。
ココナッツを原料として各種の産物がとれる。ココナッツミルク、コプラ(油糧原料)、果汁、細工原料、建材など。パルミットは、これらの中で最も価格が高く貴重品とも呼べよう。
アサイ種のココナッツが生育し、五~六年たつと高さは五~七mに育つ。まだ結実せず若木の状態であるが、これを伐採して木の上の部分のみを切り取る。
この部分の約八〇センチメートルぐらいがハートと呼ばれて食用となる。本来ならばこれから成長し七五年間もココナッツがとれるのであるのに。成長点を失って木は枯れてゆく。
パルミットはまさに珍果で、まだ外に出ないヤシの葉や葉柄がかたく巻き付いたままの状態を指す。ハート・オブ・パームと呼ぶのにふさわしい。このハートと呼ばれる部分をカットして工場に運ぶ。
外皮をはぎ、続いて内皮も取り除き、芯の部分のみとされる。この直径は三~四センチメートル。缶詰規格の七号缶に詰められ、塩水とクエン酸の溶液に漬けられ約一時間、一〇〇度Cで殺菌され製品化される。塩度で二%ぐらいのものが多い。主として輸出用に。
パルミットは生のままで食べるのが最高。甘みがあり、ナッツのように香ばしく、しかも柔らかい白アスパラガスにも似ている。アクがないので生のままサラダにされる。
生産国はブラジル、エクアドル、フィリピンなどで、流通は主として缶詰の状態となる。日本にも各国産が輸入されている。
缶詰の食べ方はサラダが最高で、アメリカではこのサラダをミリオネア(百万長者)サラダと呼んで高く評価している。フランスでもこのシャキッとした食感と風味を好み、大量に輸入し食通のファンを楽しませている。
サラダのほかアスパラガスと同様の調理ができ、ホワイトソースであえたり、グラタンに利用、歯ごたえがあってうまい。そのほかハム、オリーブ、ガーキン(ピクルス)と一緒にオードブルとしても用いられる。クレープで巻いてソースをかけたり、ベーコンで巻いて軽く炒めたり。黒オリーブのみじんとサラダにすると一段と映える。価格面でもそれほど高くなく、利用面は拡大が期待される。