低価格時代の外食・飲食店 「くるまやラーメン」 直営重視の堅実経営
「くるまやラーメン」は、(株)栄商事(本社=東京・足立区)展開のチェーンビジネスだ。
創業昭和47年(一九七二年)7月。創業者の草野光男氏が綾瀬駅前(東京・足立区)で、うどん・そばの店を開業したのが始まりだ。
FC展開はどさん子に五年遅れてのスタートだった。どさん子は先発チェーンの強みで、昭和46年には五〇〇店、52年には一〇〇〇店舗をチェーン化している。
FC開始二五年。くるまやラーメンは現在においても一〇〇〇店舗には達していないが、しかし、その経営体質は堅実だ。チェーン展開はFC出店だけには頼らない。バランスを取って直営出店にも力を入れている。
店舗数は平成5年(一九九三年)で直営一五〇店、FC三二五店、昨年12月末現在で直営二六〇店、FC二八〇店の計五四〇店を出店している。
直営出店は経営を安定させ、生産性を向上させる。飲食チェーンでFC、直営のバランスを取ってチェーン展開しているのは、ラーメン業界では唯一くるまやラーメンのみで、飲食ビジネス全体を見渡してもケンタッキーフライドチキンくらいだ。
後述のデータは推計部分も含まれているので正確ではないが、日経流通新聞「飲食ランキング〈二五〇社〉九五年度」(九六年4月25日付)によると、店舗数はどさん子がFC二〇店、直営七九五店、合わせて八一五店、売上高二六一億五〇〇〇万円(前年比三・五%減)。
くるまやラーメンは直営二四三店、FC二九〇店の計五三三店、売上高四〇七億五〇〇〇万円(前年比一六・八%)。
くるまやは店舗数でどさん子の六・五割のウエートだが、売上げは逆に一・五倍を超える。ランキングもくるまやが二五位、どさん子が五三位。
出店数に開きはあるが、業績ではくるまやが大きくリードする。
単純に計算すれば、くるまやラーメンは一店舗当たり年間七六〇〇万円(月商六三三万円)の売上げ。どさん子は同三二〇〇万円(二六六万円)。
目安的な比較にすぎないが、くるまやチェーンの生産性の高さを物語っている数字だ。
チェーン展開は北海道地区から九州地区までほぼ全国におよんでいる。出店のロケーションは郊外ロードサイドが主体であり、既存チェーンの八割が、この立地だ。
店舗面積四〇~五〇坪、客席数六〇~七〇席。月商八〇〇~一〇〇〇万円、粗利六五%、純益三〇%が標準値で、FCシステムの加入は加盟金一〇〇万円、商標権一〇〇万円。ロイヤルティーはどさん子同様に、現在は徴収していないが、今後一律に月間一〇万円を課することも検討している。
ポジティブな内容ばかりではない。店舗運営では苦戦を強いられている面もある。中部、関西地区ではし好の変化で、集客が落ちているチェーン店も出てきている。
西日本は一般的には細麺、醤油味、関東以北は太麺、味噌味が基本だ。地域ニーズに対応していくために、ここ一、二年前から新タイプの出店とも取り組んできている。
「麺館(メンズハウス)」がそれ。昨年12月、群馬・館林で直営一号店を出店し、今年に入って名古屋市内に二号店目を開店。直営、FC合わせて名古屋地区では年内に二〇店前後を展開する計画だが、FC第一号はこの1月27日、岐阜に出店した。FC二号店目はロードサイド立地で、4月ごろをめどに盛岡に出すことが決まっている。
この新タイプのラーメンショップは、西日本では既存直営店(六〇店)のリニューアル化、関東および東京以北では新規出店を積極化する。
FCは当面の目標として一〇〇店舗を計画。店舗展開はラーメンにとどまらない。直営主体でちゃんこ料理「両国」を二二店、中華・台湾料理「光華」八店もチェーン化している。
「出店ばかりではありません。昨年9月からは組織の内部固めと、人材の育成を重要課題にし、経営の質的向上とも取り組み始めています」((株)栄商事営業部管理課大槻信夫課長)
店舗のクリンリネス、販促、メニュー開発、店舗の数値(コンピュータ)管理も徹底している。二〇〇〇年初頭には直営だけで一〇〇〇店、年商一〇〇〇億円が目標。今後の推移が注目される。
・企業名/(株)栄商事
・チェーンブランド/「くるまやラーメン」「ちゃんこ両国」ほか
・創業/昭和47年7月
・会社設立/昭和50年7月
・本社所在地/東京都足立区綾瀬三‐一六‐四(Tel03・3629・0059)
・資本金/一億円
・代表取締役社長/草野光男
・従業員数/四五〇人
・事業内容/ラーメン、中華レストラン、ちゃんこ料理店などのチェーン展開
・出店数/直営二四三店、FC二九〇店、計五三三店(九六年3月期)
・売上高/四〇七億五〇〇〇万円(同、前年比一六・八%増)