地中海料理の人気 イタリア、世界最大級のワイン生産国
以上数例でみるように地中海料理は少しの気取りもない。フランス料理というと鮮度の低くなった食材に手を加え、丹念にソースを作り、ソースのおいしさで食べさせる。地中海料理にみるように、エビを半分に切り塩を振りかけて網焼きにするような豪快さはみられない。
しかもトマト、ニンニク、オリーブ油がよくハーモニーしておいしさを演出する。別の表現をすれば野趣あふれる味、素朴な味、鮮度を生かす味ともいえよう。
数多くみられる欧米料理、エスニック料理と対比し地中海の持つイメージは抜群に高く、料理自身が(イ)日本人の口に良く合う(ロ)安上がり(ハ)バラエティーも多い(ニ)手軽である(ホ)珍しいものもある(ヘ)おいしい(ト)ヘルシー‐‐などがあげられ、人気はさらに拡大機運にあるといえよう。
そして食材的に成長期待のものが多くみられ、各レストランでも積極的に取り入れて上昇の波に乗ることが望まれよう。特にイタリア味が本命である。
(1)オリーブ油=高級感にあふれ特有のうまみと香りがみられる。生食としてサラダに適している。健康面で動脈硬化を予防し、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞を防ぐ効果がみられる。消費は急上昇を続けている。特に本物志向が高まり、バージンオイルは力強い動きを見せている。香りの高いものほど良品といえよう。
(2)バルサミコ・ビネガー=バルサミコとはイタリア語で芳香のするという意味である。北イタリアのモデナ地方で産出するワイン・ビネガーである。一年ごとに違う材質の樽に移し替え、数年をかけて熟成させる。三〇年ものはコニャックよりも高値である。サラダやソースに芳醇な香りとまろやかな甘みと気品を添える。
(3)バジル・ソース=南仏ではピストウ・ド・プロバンサル、イタリアではペスト・アラ・ジノベーゼと呼ぶ。バジルとオリーブ油を主原料とし、粉チーズを加えることもある。美味なソースでサラダ、スープ、ピザ、ピラフなどに向く。
(4)アイオリソース=ニンニク入りオリーブ油ソースである。スペイン、プロバンス、イタリアなどで広く使われる。ニンニクをすりつぶし、卵黄、塩、コショウ、オリーブ油とまぜマヨネーズ状に。冷肉料理、魚料理(サルタニャードなど)に添える。バジルソースと並んで地中海味を代表する逸品で本年度に期待。
(5)フォカッチャ=本年度はエスニックパンの人気が高い。フォカッチャもそのひとつで、イタリア料理の普及で知名度上昇中。ピザの生地を伸ばして焼いた主食用のパン。新顔であるがお好み焼きにも似て屋台などで食べると格別の味。価格も安く実力食品。オリーブ油の香りも高く味もあっさりしている。
(6)エスプレッソ=アメリカからエスプレッソ・コーヒーチェーンが上陸した。日本でも迎撃体制で大手メーカーが多店化を展開中。本来イタリアで生まれたコーヒーで強い苦みと濃い色が特徴である。熟練度が味を決めるものでマシン、グラインダー、コーヒー豆、バリスタ(コーヒー専門家)が一体となって創造する芸術品である。ヒーリング(癒し)効果が絶大で、イタリアの味によく合う。エスプレッソ時代が到来した。
(7)ワイン=静かなワインブームで伸びが高い。最近では愛好者のし好がレベルアップし、低価格品から中級、高級品を求める動きと変わった。この中で輸入順位は仏、独、伊であったが、地中海食品のブームでイタリアンワインが急増。順位もドイツ産(有名なラインワインやモーゼルワイン)を抜いて二位に浮上し、イタリア食の普及したことを裏付けている。
イタリアでは食事にワインは欠かせない。単にワインを飲むというのではなく、料理を決めたら、これに最も良く合うワインを選ぶ。食事の楽しさが倍増する。
イタリアは世界で最大級のワイン生産国なのである。地中海性の気候は降雨量が少なく太陽がさんさんと降り注ぐ。良質の原料ブドウがたくさん採れるのである。栽培面積も世界第二位である。
主産地をみるとピエモンテ、ロンバルディア、ベネチアは北部イタリアの大ブドウ栽培地帯。また中部ではトスカーナ、ウンブリア、ラツィオ地区が、南部ではカンパニィア、プグリア、そしてシチリア島とほぼ全域で産出される。
特に人気の高い銘柄をみると、ピエモンテ州のバルバレスコ、バルベラ、バロロなどはイタリアを代表する逸品の赤ワイン。日本で知名度の高いのはトスカーナ産のキャンテワインで、赤・白あるが圧倒的に赤が多い。最高品は花の香りがして鮮やかなルビー色である。特にびん型が変わっているので特徴となる。
人生をエンジョイし食を楽しむ。欠点として美味すぎて太ることが心配のイタリアである。
(食品評論家・太木光一)