名古屋版:シリーズ・今年の業態動向を探る(7)カレー編
日本人なら誰もが時々食べたくなるメニュー、カレー。しかしこれほど、それぞれがこだわりを持つ料理もめずらしい。具にジャガ芋が入る入らないにはじまって、スパイスの分量や味付けまで、マニアックに譲れない決めごとがある。そんな客のニーズをとらえると、おのずと店は独自の味つけや料理をつくることが大切になる。今回は、カレーチェーンの大手「(株)壱番屋」と名古屋におけるインドカレーのパイオニアである「えいこく屋」、さらにランチタイムにカレーブッフェを行っている「名古屋ヒルトンホテル」に、種々さまざまなオリジナルな提供の仕方を聞いた。
全国に四五六店舗を展開、成長企業の(株)壱番屋。味の基本は「ごくふつうの家庭カレーで、二一年前の創業以来変えていない」(同社商品管理部部長、松本康稔氏)。しかし、当初一一あったアイテムは三二へ増加。従来の味付けをベースに常に新しい具材やトッピングの組み合わせによるメニュー開発は積極的だ。客自身がライスの量、ソースの辛さ、好みの具を選べ、いわば自己創作カレーの域となる。
それに比して、正統派インドカレー路線をゆくのが「えいこく屋」。紅茶やスパイスの輸入販売を行っていた関連で一三年前にオープン。当時名古屋には数えるほどしかなかったという。今でこそナンを知らない人はまれだが、同店では最初からナンを導入。「あくまでも本場の基本を大切に守ってやってきた」と荒川博之社長は話す。
「食材を日本人の好みに合わせて選ぶのは邪道」(同氏)との考えから、仕入れはすべて輸入に徹する。年々地道に数字を伸ばし、現在の年商二億七〇〇〇万円。個店として確固たる地位を築いている。
ランチタイムに「カレー&サラダブッフェ」(料金一人一六〇〇円、コーヒー・紅茶付)を設けている「名古屋ヒルトンホテル」。開放的なロビーラウンジでゆったりといろいろなタイプのカレーが楽しめる。
始めて九年目。最初は日本風カレーが主だったが、四年目から本格的インドカレーを提供。今ではシンガポール、マレーシア、タイを加えて八アイテムとバリエーションをそろえ、アジアで話題のカレー料理をいち早くレシピに取り入れる。
情報発信地の役割をも持つホテル。ヒルトンにいけば、時代の先端をゆくカレー事情がわかる仕組みだ。
万人向きで飽きがこない、壱番屋のカレー。「カレーの嫌いな人でも店に入って好きなカレーを見つけてもらえるように」(松本氏)、トッピングとソースが補完の役割を果たす。現在トッピングで人気は(1)チーズ(2)ロースカツ(3)野菜の順。これからの課題は、カレーをどこまで掘り下げ広げられるかということ。スパゲティ、ピラフ、うどんとの新しい組み合わせも考えてゆく。
えいこく屋は、六、七年前からカレーの商品開発を積極的にすすめ、販売を行っている。カレーのレトルト、チャツネ、ナンパウダー、スパイスセット、アイテムごとに分けたカレー粉など、えいこく屋のシェフの味を家庭でも味わうことができる。
ヒルトンでは、「ココナッツミルクを加え、味の傾向はマイルドへ」(副総料理長藤田氏)とのこと。年に五、六回シェフを招き流行のインド料理を提供。客層は近くのサラリーマンやOLが主で平均一七〇~八〇人と売上げは安定している。
カレーの原産地、インド。そこから世界中へ広がり多種多様のカレーができあがった。ここ日本では、そのすべてを味わえる幸せな環境にあるといえよう。
昭和20年からインスタントカレーを手掛けているカレーの老舗、(株)オリエンタルカレー(本社=名古屋市中村区、電話052・451・5151)に近年のカレーの動向についてきいた。話してくれたのは取締役購買部長山内正雄氏=写真。
本来カレーは外国からのもので、日本では地域的に味の区分けはないとの考えだ。昔からあるルーを使ったヨーロッパタイプのカレーが主流。しかし、近年小麦粉を使わないインドカレータイプやタイカレーなど、よりバリエーションや辛みも幅が広くなった。それにナンが家庭に少しずつ普及されるようになるなど、よりカレーに対する価値観もさまざまという。同社も「料理人の味の個性が出やすい、オーソドックスなルーにこだわる一方、パイを広げるためにメニュー開発を進めていく方針」(同氏)。