地酒と料理のおいしい店 「加賀屋 秋葉原1号店」

1997.09.15 135号 5面

ネオンがきらめく秋葉原の電気街を通り過ぎた静かな一角に「加賀屋秋葉原一号店」がある。階段を下りていくと、くつろいだ時間が流れるビジネスマンの隠れ家的な存在だ。

客層の約九割はビジネスマン。「会社帰りにネクタイを緩めるような気分でくつろいで欲しい」(中川弘光店長)と、数年前改装した際、テーブル席よりゆっくりできる座敷のスペースを広げた。

メニューも「会社帰りはお腹がすくでしょ。安くて、お腹いっぱいになって、しかもおいしく」と、あくまで働く人の目線から考えていく。タン、つくねなどの焼き鳥は、通常の倍ほどのボリュームがあり食べ応え十分。店主の心意気が伝わってくる一品だ。

梅シソの肉巻きやニンニクの丸揚げなど、料理は二五〇~五五〇円とうれしい価格。したがって食材の原価も抑えられるが、その範囲内で、いかにおいしくするか、季節感を出せるか、挑戦の毎日。

おすすめ料理の「夏のてんぷら」は、旬のアナゴ、メゴチをカラッと揚げ、さらに清涼感ある若緑の抹茶塩で食べる。また、「夏のサラダ」は、新鮮なレタスやアスパラの緑の上にイクラを鮮やかに盛る。そして、夏場の食欲のない時も食べられるように、ワサビドレッシングでさっぱりと仕上げるなど、細かい気配りも欠かさない。

一方の地酒は、うまくて、しかも安定供給できる酒を置く。そして毎年半分のアイテムを常連客の意見を参考にしながら取り替え、常にうまい酒をそろえる。

特に人気があるのは、不動の人気を誇る銘酒「久保田百寿」や、「夏子の酒」のモデルの蔵元で有名な久須美酒造の「清泉酒の香地」。すっきりした辛口でどんな料理にも合うと大人気。また、首都圏で入手困難とされる幻の酒「田酒」の純米酒も取りそろえるなど、少数精鋭で臨んでいる。

店の居心地の良さは、そこで働くスタッフによるところが大きい。「灰皿を交換すること一つ取っても、お客さんと気持ちよく言葉を交わせるように心配りを」とスタッフ教育にも熱心だ。

おいしい料理と全国の銘酒を、スタッフの心配りを感じながら味わえば、帰りの階段を上る足どりはきっと軽くなっているだろう。

◆「加賀屋秋葉原一号店」(東京都千代田区神田練塀町三、大東ビル本館B1、電話03・3258・3098)=営業時間午後5時~11時30分、日曜・祭日休み、予算三〇〇〇円

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