10年後を見据えた飲食店の課題 ラーメン=淘汰される手抜き店
日本人の麺好きは、説明するまでもないが、ことラーメンとなると、カレーとともに日本人の国民食といっても過言ではないほど、愛し食されている食べ物である。スーパーやコンビニなどの売場に並べられたインスタントラーメンの種類も半端ではない。主食であり、軽食でもある。とても気軽で、手ごろ。そして奥が深い。
そんなラーメンという食べ物を人は愛し、全国津々浦々でおいしいラーメン屋は今日もお客様が行列する。何とラーメン博物館までできてしまった。
皆に愛され、だれも一家言持っているラーメンの故郷は、言わずもがな中国大陸だが、スープ、麺、具などが織りなす絶妙なハーモニーが、一〇〇店一〇〇味といわれるラーメンという食べ物の面白さであり、ラーメン屋の難しさである。
圧倒的にパパストアが多く、繁華街、市街地、郊外の至る所に存在し、一〇~三〇坪、客単価七〇〇~九〇〇円くらいで、月商五〇〇万円ぐらいまでという店舗がほとんどではなかろうか。
汁物で全国制覇はむずかしいという常識を、いとも簡単に覆したサッポロラーメンをはじめ、さつまラーメン、喜多方らーめんといったようなチェーンストアの台頭はあったものの、ラーメン業界もブーム、淘汰を繰り返してきた。
今本当の専門店の時代を迎えて、標準化された加工度の高い食材を使ったお店、手間ひまのかかっていないラーメンを売っているお店、ただ安かろうまずかろうというお店は、ますます厳しくなっていくだろうというのは想像に難くない。
ただ、原料費率は三〇%切って当たり前、中華料理なんだからお店も油ぎっていて当たり前、客単価も安いのだからサービスなんて関係なしで当たり前、という昭和40年代の第一次外食産業革命以前のラーメン屋の発想も、時代錯誤であることを理解されたい。
たかがラーメン、されどラーメンである。屋台からスタートして居酒屋、何でも屋の時代を経て、ファミリーレストランの洗礼を受け、今まさに専門店、こだわりの時代である。おいしさの追求は味だけにとどまらず、今の生活者が求めるおいしさ、味、サービス、店舗、雰囲気のすべてで勝負が決まってくる。
茨城県にこだわりらーめんゆきむら亭というラーメン店がある。平成5年にスタートして繁盛店の拡大理論で店舗を増やし、現在一一店舗あるが、三四坪で月商一五〇〇万円をもアベレージにしてしまう超繁盛店がまさに好例である。
当然のごとく店舗でとるスープに味のばらつきはある。ただ、信じられぬほど手間ひまかけ、こだわりにこだわった食材と技術が作り出す一杯のラーメンは、確かに食べた者に説得力を持って語りかけてくる。脇役のサイド商品一〇品も手を抜かないこのお店の客単価は一〇〇〇円をも超えてしまう。
このような変革期にあって、パパママストアは後継者不足である。チェーンストアの標準化された味はもはや食傷気味である。国民食とさえいわれるラーメン店の前途は、決して楽観できない状況である。
お客様の気持ちが変わってきた第二次外食産業革命の中で、前途のこだわりらーめんゆきむら亭のような、しっかりお客様の気持ちをとらえ、原点の味の追求を怠らず、そして何よりも人づくりに妥協しない、本当の専門店が勝ち残っていくのではないだろうか。
たかがラーメンの部分だけでの商売は今後ますます厳しく、されどラーメンの部分に挑戦していく商売こそ、ますますお客様に支持されていくのではないだろうか。一〇年長いようであっという間である。私はこう予測する。