特集・デリバリーピザ市場:「ポケットフーズ」吉村九州支社長に聞く
大手チェーンの新規出店が鈍るなか、昨年発足したポケットフーズ(株)九州支社の手掛ける「ピザポケット」が九州地区で急激に店舗数を増やしている。他チェーンからの鞍替え、または買い取りによる、既存店のリニューアル出店が主だが、開設からわずか一年間で三二店舗(九州地区二二店舗)を傘下に収め、前年の売上高は既存店ベースで前年対比一一七%を記録、本年度も前年対比一二〇%と好調に推移している。“立て直し屋”の異名をとる支社長の吉村氏に現状を聞いた。
‐‐不振店の立て直しに手腕を発揮しています。ポイントは何ですか。
吉村 不振店のオーナーに共通していえるのは、経営者としての自覚が欠落していることです。まずはそこにメスを入れなければいけません。でなければ何をやっても無駄。オーナーの意識改革なくして、他の打開策を講じても、かえって現場(店舗)が混乱するだけです。
宅配ピザ業界は、ブームに乗って簡単に繁盛した経緯から、アルバイト感覚で作業をこなしているだけの店舗が多い。チラシをまいてピザを作って運べば良いと考えている。サービス精神も皆無に等しい。
つまり、不振店といわれるオーナーには、経営者として何をすべきか分かっていないだけのケースが多いのです。
‐‐どのように経営者意識を変えるのですが。
吉村 宅配ピザ屋の基本を再認識させることに尽きます。
ピザをレシピ通りに作る。オーダーには丁寧に対応する。迅速に熱々のピザを届ける。オーダーピークを予測してスタッフを配置する。いずれも宅配ピザ屋にとっては基本中の基本です。これらを守るだけで、月商は一〇〇~一五〇万円ぐらい簡単に跳ね上がります。
しかし、楽して儲けた経験があるために、これがなかなかできない。基本を守らずに、上っ面のメニューや価格ばかりをいじりたがる。だから私たちは口だけでなく実際に現場に入り、基本回帰だけで数字(売上げ)を上げて見せる。するとオーナーも納得してついてくるわけです。
オーナーの意識が変われば現場(アルバイト)の志気も変わり、売上げも伸びはじめます。私たちが立て直すケースとしては月商三〇〇~三五〇万円レベルの店が多いのですが、基本回帰だけで四五〇万円台にはすぐ回復します。あとは五〇〇万円台に堅調に推移、本部では六〇〇万円を安全ラインと設定しています。
‐‐一番大切な“基本”を置き忘れている店舗が多い、ということですね。他チェーンはそうした基本回帰をやらないのですか。
吉村 初めから基本に忠実な上位数社に関しては必要ないでしょう。大崩れしている話も聞きませんし。しかし、それ以外のチェーンについては疑問です。
たいていのチェーンは、ブームに乗って、金持ちを対象にFCを募ってきました。拡大一辺倒で楽して儲けてきたものだから、指導力を発揮するための地道な集積がほとんどない。基本を率先して指導するスーパーバイザー教育もできていない。それどころか、月商八〇〇万円だとか一〇〇〇万円だとか、大風呂敷を広げて募集しているものだから、いまさら月商五〇〇万円でやりましょうともいえない。だからこの時勢に打開策を打ち出せないでいる。業界のウイークポイントですね。
私たちは見えを張らずに、まずは月商五〇〇万円を目標に掲げています。五〇〇万円の売上げで一定の儲けを設定し、後は努力次第で積み重ねましょう、というやり方だから無理がありません。また、収支モデルも一律でなく、商圏やスタッフの力量に応じて各店別に作成します。場合によっては月商三〇〇万円でも十分やっていけますね。
‐‐今後のチェーン本部に求められることは何ですか。
吉村 “本部が責任を持って手本を示す”に尽きます。
‐‐今後の展開計画を聞かせて下さい。
吉村 九州地区の戦略としては、将来的には一〇〇店舗体制が目標。取り急ぎ福岡市内に三〇店舗、その他九州内に二〇店舗、二〇〇〇年3月までに九州地区五〇店舗体制を目指します。小商圏フォーマットによるFC展開を主力とする方針です。
‐‐今後の活躍を期待します。ありがとうございました。
◆よしむら・しげのぶ/昭和42年福岡県生まれの三一歳。高校卒業後、業務用卸のルートセールスを経て、62年に大手ピザチェーン、63年に地場チェーンなどのチェーン化事業に手腕を発揮する。平成9年以降現職に。
「ピザポケット」のチェーン事業を通し、九州地区の宅配ピザ業界の発展と再構築を目指す。
◆ポケットフーズ(株)九州支社/福岡県福岡市博多区博多南一‐七‐二二、ブックローン福岡ビル五階、Tel092・432・5800